先生の仕事、「魅力」はあるの?

学校教育で、生涯にわたって活躍できる力を子どもに付けさせるには、先生の「質」がカギを握っていることは、言うまでもありません。子どもにとっても、将来なりたい職業のベストテンに「教師」が入る(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会調べ)など、憧れの存在です。しかし今、教育界では、優秀な教員のなり手が減っていることが、大きな問題になっています。各地で進められている「学校の働き方改革」も、教職の魅力を高めて、優秀な人材を学校に呼び込みたい狙いが込められています。現状はどうなっているのでしょうか。

危機的な採用試験の3倍割れ

文部科学省が昨年末に公表した公立学校教員採用試験の18年度実施状況によると、小学校の競争率は2.8倍で、3倍を割り込みました。バブル経済がはじける直前の1991年度と並んで、過去最低の数値です。

もっとも、これはあくまで全国平均です。都道府県・指定都市別に見ると、1.2倍の新潟県、1.3倍の福岡県など、2倍を切るところも少なくありません。

これに比べれば、中学校は5.7倍、高校は6.9倍あるのですが、小学校と違って教科別のため、募集人数自体が少ない事情もあります。いずれも前年度より倍率が下がっていますから、安心してはいられません。

教育委員会の採用担当者にとっては、競争倍率が3倍を切ると、優秀な人材が選べなくなる、というのが経験則です。全国平均でさえ3倍を下回ったというのは、日本の教育全体の危機だと言っても過言ではないでしょう。

こうした問題は、中央教育審議会でもたびたび議論になっています。2019年1月の答申でも、教師を目指そうとする人を増やすためにも、働き方改革を進める必要性を強調していました。

優秀な学生ほど避ける!?

一方、19年3月に国立の教員養成大学・学部を卒業した人のうち、大学院などへの進学者や保育士就職者を除くと、教員に就職した割合は65.7%にすぎません。前年度と比べても1.3ポイントの減少です。

これには近年、民間企業への就職が好調なことの裏返しという側面があります。ただ、中教審の委員をはじめ、教員養成の現場からは「優秀な学生は、学校の現場を知れば知るほど、教職を避ける傾向がある」といった指摘が相次いでいるようです。教職志望者には教育に対して真面目な人が多く、ましてや優秀な学生ほど、自分にはこんな大変な仕事は務まらないのではないか……と、しり込みしてしまうというのです。

働き方改革が求められているのも、単に事務仕事が増えているだけではありません。本来の業務である児童生徒への指導にしても、身に付けさせるべき資質・能力や、発達障害も含めた特別支援教育への対応、ICT(情報通信技術)教育など、学校の課題が多様化していることが背景にあります。

だからこそ優秀な先生に教職を目指してもらい、教職に就いてからも研さんを積んで「学び続ける教員」(2015年12月の中教審答申)になってもらわなければなりません。教育は将来の国の在り方も左右するだけに、社会全体で考えなければならない問題でしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※2019年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00001.html

※国立の教員養成大学・学部及び国私立の教職大学院の就職状況等(2019年3月卒業者・修了者)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kyoushoku/kyoushoku/1413296_00001.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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