入試の歴史を暗記から思考力育成へ 学術会議が提言

日本学術会議が、「歴史的思考力を育てる大学入試のあり方について」と題する提言を公表しました。高校の新しい学習指導要領が2022年度の入学生(19年度の中学1年生)から全面実施となり、地理歴史科の科目再編が行われることに伴うものですが、どのような提言なのでしょうか。

新指導要領で「歴史総合」必履修に

現在、地歴科には▽世界史A▽世界史B▽日本史A▽日本史B▽地理A▽地理B……の6科目が設定されており、A科目が2単位、B科目が4単位となっています。このうち世界史はA、Bのどちらかを必ず履修することになっており、日本史と地理は4科目の中から1科目を履修することになっています。

新指導要領では、こうした科目が大幅に再編されます。最大の目玉は、全員が必ず履修する「歴史総合」「地理総合」(いずれも2単位)の創設です。とりわけ歴史総合は、日本史と世界史を合わせたもので、世界とその中に日本を広く相互的な視野から捉えて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目です。
▽A 歴史の扉
▽B 近代化と私たち
▽C 国際秩序の変化や大衆化と私たち
▽D グローバル化と私たち
……という内容で構成しており、「主題」や「問い」を中心に学習を展開します。

その上で、歴史や地理を発展的に学習する選択科目として「日本史探究」「世界史探究」や「地理探究」(いずれも3単位)を設定しています。

これに対して学術会議は、大学入学共通テストや、個別大学の歴史系の入試科目を「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」とするよう提言しました(地理系は「地理総合・地理探究」)。なぜなのでしょう。

知識重視を改める必要

学術会議の提言では、今回の科目再編には「暗記重視の知識詰め込み型から思考力重視の歴史教育への移行というねらいが込められている」と受け止めています。

一方で提言では、2006年秋に全国的な問題に発展した「『世界史』未履修問題」を取り上げています。富山県の公立高校が世界史などを履修させていなかったことが発覚したのを契機に、世界史に限らず必履修科目を履修させていなかった高校が全国で12.3%あったことが、文部科学省の調査で明らかになりました。その主な要因として、大学入試の影響を指摘しています。現在では未履修はなくなったものの、世界史Bの前半だけで2単位分の履修を終える高校があるなど、現行指導要領の下でさえ世界史必修の所期の目的が完全に実現しているわけではないことを問題視しています。

そこで提言は、歴史総合を歴史系の入試科目に必ず組み込むことにより、高校歴史教育と大学入試で一体的に進めることを求めています。

受験生の側にも、意識を変えることが求められます。現行指導要領でも、歴史的思考力を育むことが重視されていたはずですが、知識の丸暗記でも一定の点数が取れるため、「日本史・世界史は暗記科目だ」と誤解してきたのではないでしょうか。しかし今後はそんな考え方や勉強方法は通用しません。もちろん、歴史に限った話ではないでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※日本学術会議 提言「歴史的思考力を育てる大学入試のあり方について」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t283-2-abstract.html

※文部科学省 2018年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A(地理歴史に関すること)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/qa/1422369.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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