格差解消に本格調査へ 全国学力・学習状況調査

文部科学省は、毎年行っている全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)で2020年度、「社会経済的背景」(SES)が学力に与える影響を本格的に調査する方針を決めました。家庭の経済格差の拡大に伴い、貧困家庭で育った子どもが大人になってからも貧困状態から抜けられないという「貧困の連鎖」が、大きな社会的問題として認識されるようになってきています。そうした中、子どもに経済格差を乗り越える学力を付けさせる学校の役割に、期待が高まっています。

抽出の経年変化調査と保護者調査を連動

毎年4月に行われる全国学力調査では、「本体調査」として、小学6年生と中学3年生を対象に、国語と算数・数学のテストを出題するとともに、質問紙調査(アンケート)を児童生徒と学校に実施しています。さらに3年に1度、理科(前回は2018年度)と中学校英語(19年度から実施)も出題します。

ただし出題される問題は毎年違っており、全体として学力が上がったのか下がったのかわからないため、一部の児童生徒を抽出した「経年変化分析のための調査」(前回は2016年度)が行われることもあります。また、経年調査を受けた児童生徒の保護者を対象とした「保護者に関する調査」(同17年度)もあります。これらを「追加調査」と呼んでいます。

2020年度は追加調査として、経年変化調査と保護者調査を同時に実施し、両者を連動させてSESも本格的に調べることにしました。SESはSocio-Economic Statusの略で、子どもたちの間にある経済的格差や不平等の度合いを示す指標です。家庭の所得など金銭的・経済的な資源だけでなく、保護者の教育に対する価値付け(子どもに進学してほしい学校段階など)といった、文化的・社会的な資源も含むものです。

格差を克服させる学校に

これまでの調査や研究では、就学援助を受ける家庭が多いなどSESで不利な学区の学校では全国学力調査の平均正答率が低くなったり、世帯の年収が多いほど子どもの正答率が高くなったりするなど、SESと学力には大きな関係があることがわかっています。一方で、SESから想定される学力よりも平均正答率が高い、「効果のある学校」「成果を上げている学校」などと呼ばれる学校の存在も、明らかになっています。継続的にSESを克服させるような取り組みをしている学校を増やすことが、すべての子どもの学力を底上げするとともに、貧困の連鎖をなくすためにも重要です。

福岡教育大学の研究によると、SESには、個人レベル(家庭環境)のSESだけでなく、集団レベルのSES(学校や地域の環境)があります。SESと学力の関連には、(1)家庭レベルのSESが生徒の学力に与える直接的な効果(塾通い、親の教育期待など)(2)それが学校レベルのSESに与える間接的な効果……があると考えられています。

2020年度の全国学力調査では、本体調査でも、中学3年生の結果を、小学6年生の時の結果(17年度)と比較したデータと併せて提供することになっています。

誰一人取り残すことのない学校教育を実現するためにも、研究の深まりとともに、その結果に応じて、格差解消のための有効な政策が講じられることが期待されます。

(筆者:渡辺敦司)

※全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/1344101.htm

※全国的な学力調査に関する専門家会議(第4回)配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/146/shiryo/1422597.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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