園の先生に研修と励ましを!

10月から幼児教育・保育の無償化が始まりましたが、家庭の経済的負担の軽減ばかりでなく、質の高い幼児教育・保育がその後の人生や社会全体にまで大きく影響するという重要性に着目してのことでした。それほど高い効果のある幼児教育・保育ですが、肝心の質を支える先生の状況は、どうなっているのでしょうか。これについて、国際的な比較調査の結果が公表されました。

幼児期にふさわしい学びを実践

経済協力開発機構(OECD)の「国際幼児教育・保育従事者調査」は、幼児教育・保育に携わる園長・所長など管理職と、従事者を対象とした調査です。このうち3~5歳児担当者を対象とした調査には日本・チリ・デンマーク・ドイツ・イスラエル・アイスランド・韓国・ノルウェー・トルコの9カ国が参加しました(3歳未満の調査は4カ国、日本不参加)。参加国が少なく、また各国の事情や文化も違うため、国際順位で比較するにも限界がありそうですが、それでも国際的に見た日本の特徴が浮かび上がってきそうです。

子どもの言語や基本的な読み書き能力・数的能力を伸ばす取り組みとして、日本で上位三つに挙がったのは(1)子どもの目線に合わせる(2)子どもの話を繰り返したり、自分の言葉に言い換えたりする(3)子どもたちが互いに話すよう促す……で、同様に、社会情緒の発達を促す取り組みは(1)子どもの遊びに加わっているとき楽しそうにする(2)子どもと気持ちについて話をする(3)子どもがどんなことが悲しいのか話すことを手助けする……でした。

ベネッセ教育総合研究所の調査でも、幼児期に培った力が小学校低学年以降の学びに向かう姿勢に影響し、年少児期の生活習慣が土台となって「学びに向かう力」の成長に結び付き、それが文字・数・思考の成長に結び付くことがわかっています。決して早期教育をすればよいのではなく、幼児期には幼児期にふさわしい学びが必要だということです。OECDも「力強い人生の始まりを、すべての子どもたちに」と訴えています。

「評価されている」実感が薄く

日本の強みは、保育者のほとんどが短大・専門学校以上の学歴を持っていることです。しかし、大卒の割合は必ずしも多いわけではありません。採用後に専門性を向上させるための研修機会が豊富にあればよいのですが、日本でも多くの参加国と同様、大卒以上のほうが、研修に参加する割合が高くなっています。OECDの小原ベルファリゆり就学前・学校教育課長は▽費用負担が高い▽代わりの先生を見つけるのが大変……が主な理由であり、質を高めるには、もっと研修機会を増やすべきだと指摘しています。

もっと気になるのは、「評価されている」との実感が薄いことです。社会から評価されていると感じているのは、9カ国で最も低い31%でした。保護者から評価されていると感じる割合も、他の国が90%以上だったのに対して、日本は60%を超える程度です。

日本の幼児教育は「環境を通して行う」(幼稚園教育要領)ことが基本です。自発的な活動としての遊びを通して、心身の調和の取れた発達を促すことが求められます。そのためには保育者に、子どもの自然な発達を促す適切な働き掛けが欠かせません。

無償化に伴って、保育士不足などの問題も深刻化しています。しかし、数さえそろえばよいわけでもありません。先生にがんばってもらうための条件整備や、社会的な評価をもっと高める必要があります。

(筆者:渡辺敦司)

※OECD国際幼児教育・保育従事者調査
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/training-for-staff-in-early-childhood-education-and-care-must-promote-practices-that-foster-childrens-learning-development-and-well-being-japanese-version.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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