通信制が高校改革を変える

文部科学省が、有識者を集めた「通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」を発足させました。通信制高校をめぐっては以前、株式会社立ウィッツ青山学園高校(三重県伊賀市、2017年3月閉鎖)など一部高校での違法・不適切な経営や教育が問題になり、対策が強化された経緯があります。

一方、今回は通信制高校の「前向き」(初会合での複数委員発言)な面にも焦点が当てられる見込みです。議論によっては、中央教育審議会で検討が行われている高校全体の教育改革にも影響を与えそうです。

実態の変化で違法・不適切な運営も

高校の通信制課程は戦後、全日制課程の高校に通えない生徒に教育の機会を提供するものとして、定時制課程とともに制度化されました。当初は勤労青年が中心でしたが、近年では不登校や中退など多様な生徒の受け皿として、生徒数や学校数が増加しました。

それに弾みをつけたのが、私立や、構造改革特区で認められた株式会社立の「広域通信制高校」でした。広域通信制とは、高校の所在する都道府県に限らず、全国や複数の都道府県から生徒を募集するものです。本校舎とは別に、「通学コース」として面接指導などを行うサテライト施設を設けたり、民間のサポート施設と提携したりする例が多く、それによって多様な生徒の実態に対応してきた一方、一部では違法・不適切な運営を誘発するケースが少なくなかったのも事実です。

そうした事態を是正するため、文科省は2015年12月に緊急タスクフォース(特別作業班、TF)を設置。2017年7月には「広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」が審議まとめを行い、制度改正やガイドラインの策定・改定、点検調査などの対策が取られました。

今や無視できない存在に

今回の協力者会議は、会議名に「広域」が付いていません。前回の会議と比べても、「時代の変化、現場の実態に即した通信制高等学校の在り方について」が検討事項に挙がっていることが注目されます。

最近の通信制高校には、不登校をはじめ全日制や定時制に通えないという消極的な理由ばかりではなく、自由に時間を使いたいという積極的な理由で選択する生徒も増えています。インターネットを活用した高校の登場も、そうした動きに弾みをつけています。文科省の学校基本調査によると今年度、通信制課程を設置する学校は253校(うち通信制のみを設置する「独立校」が113校)で、生徒数は約20万人と、全日制・定時制の4,887校、約317万人と比べても、決して無視できない存在感を示しています。

通信教育では自主的・自律的に勉強する姿勢が必要になるため、学校側にも全日制や定時制とは違った、独自のきめ細かな指導が求められます。さらに、多様な可能性を期待して通信制を選択した生徒のニーズに応えることも期待されます。一方で、高校教育に求められる資質・能力を育成すべきことは、全日制や定時制の高校と変わりません。「質の確保」は、依然として大きな課題です。

逆に言えば、質の確保や「向上」は、全日制や定時制にも共通して求められることです。協力者会議で検討される通信制の質の確保・向上策は、通信制の問題にとどまらず、高校教育全体の質の確保・向上策としても問われることになりそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/153/index.htm

※広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(以前の会議)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/125/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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