女性の先生で女子の成績が上がる!?

政府が「女性活躍」(女性が輝く社会)を最重要課題の一つに掲げ、文部科学省も「リケジョ」(理系女子)を増やそうとしている一方、一部大学の医学部が入学者選抜で女子受験生に不利な扱いをしていたことが明らかになるなど、性別にかかわらず活躍できる環境の整備には、まだまだ課題があるのも現実です。
そうした中、先ごろ公表された国立教育政策研究所の報告書の中に、興味深い研究論文が掲載されています。先生と生徒の性別が同じである場合には成績が上がる傾向があり、とりわけ英語や数学、理科で、女性同士の場合に顕著になるというのです。どう考えればよいのでしょうか。

英語だけでなく理科や数学でも

報告書の調査研究は2015~17年度に行われたもので、このうち報告書に掲載された柿澤寿信・大阪大学講師の論文「生徒と教員の性別の組み合わせが成績に与える影響の検証」は、既存のデータを使った研究を進めるために執筆されたものです。
分析の対象としたのは、2003年度に同研究所が実施した「教育課程実施状況調査」の中学生分の結果です。もう15年以上も前の調査ですが、2007年度に全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が始まる前には国が実施するほぼ唯一の学力調査であり、かつ主要5教科を対象にしている点でも貴重なデータといえます。

分析の結果、先生と教員の性別の組み合わせが、生徒の成績に影響を与えることが分かりました。英語は男性同士または女性同士、理科や数学は女性同士という組み合わせで、高い成績を収めていたといいます。これには、同性の先生から教わることで「あの先生のようになりたい」というロールモデル(模範)効果によるものと推測されています。
また論文では、質問のしやすさも影響しているとみています。女子の場合、男性の先生に質問しづらく、それが成績の上昇を阻んで抑えているというわけです。

理系進学を阻まないために

分析の対象とした調査は古いものですから、現在でも同じ状況だと言い切ることはできません。しかし逆に、保護者世代ともそう遠くない時代の調査ということでも、注目してよいのではないでしょうか。

論文でも指摘している通り、「女子は文系教科、男子は理系教科に強い」といった固定観念は、今も拭い去られたとは言えないでしょう。経済協力開発機構(OECD)も、国際的な学力調査である「生徒の学習到達度調査」(PISA)の分析結果から、日本では女子生徒が成績優秀にもかかわらず理系を志望しないことを問題視。政府に積極的な措置を取るよう促しています。
特に公立学校の場合、生徒が先生を選べるわけではありません。異性同士となることも、当たり前です。問題は、性別を含めた先生の態度が、生徒の成績にも影響を与える可能性を考えておかなければならない、ということでしょう。先生自身が無意識にでも、性別によって教科の得意・不得意があると考えているとしたら、意識的に直してもらわなければなりません。そのうえで、例えば男性教員が女子生徒からも質問しやすい雰囲気づくりに心掛けるなど、一層の配慮が必要です。

もちろん保護者自身が、自分たちの経験から「女子が理系に進んだら就職に不利だ」と思い込んでいてはいけません。時代も変わっています。子どもが得意なことを伸ばして自己実現できるよう、学校でも家庭でも励ましてあげたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※「教育の効果に関する調査研究 第一次報告書」について
http://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/seika_digest_h29.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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