「主体的・対話的で深い学び」は大丈夫?

新しい学習指導要領は、人類史上5段階目の社会である「Society(ソサエティー)5.0」(超スマート社会)時代を生き抜く資質・能力を、子どもたちに身に付けさせようとすることを目指しています。その新指導要領の小学校での全面実施が、いよいよ来年度に迫っています(中学校は2021年度から)。
全国の学校では指導要領の改訂前から、新指導要領の目玉である「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)の授業改善に関心がますます高まっています。実際にはどうなっているのでしょうか。先ごろ結果が発表された今年度の全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)で見てみましょう。

小学校の7校に1校で取り組みに遅れ

全国学力調査では毎年、学校や児童生徒に対する質問紙調査も行っており、近年は新指導要領をにらんで、主体的・対話的で深い学びに関連する項目も尋ねてきました。

学校のうち「児童生徒は、授業では課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組むことができている」(「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」の合計)と回答した割合は、小学校で85.7%、中学校でも82.8%に上り、前年度に比べ各2.0ポイント、1.6ポイント上昇しました。ただ厳しい見方をすれば、全面実施まであと半年余りに迫った小学校でも、7校に1校(「そう思わない」「どちらかといえば、そう思わない」の合計14.1%)で依然として取り組みが遅れていることになります。主体的・対話的で深い学びは、全面実施までの準備期間である「移行措置」でも奨励されているものですから、一層の奮起を期待したいものです。

児童生徒に対する質問紙調査では、前年度までに受けた授業で「課題の解決に向けて、自分で考え、自分から取り組んでいたと思いますか」という質問に対して「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と回答した割合が、小学校77.8%、中学校75.0%(前年度比各1.0ポイント増、1.1ポイント増)となっています。

教科の正答率とクロス集計してみると、学力向上にもつながっていることが明らかです。例えば小学校算数で、4段階のうち「当てはまる」と回答した児童の正答率が72.6%だったのに対して、「当てはまらない」では51.4%と、20ポイント以上の開きがあります。他の教科でも同様の傾向にあり、今回初めて実施された英語は各62.8%、44.9%でした。

全教育活動で互いのよさを生かして

主体的・対話的で深い学びは、教科に限ったものではありません。総合的な学習の時間はもちろん、学級活動や道徳科(特別の教科 道徳)など、すべての学校教育活動で横断的に求められるものです。それぞれ共通の資質・能力の柱を設定したことで、相乗効果により社会に出て活躍できる力につながっていく、という考え方からです。

総合学習で「課題の設定からまとめ・表現に至る探究の過程を見通した指導」をしていると回答した学校は、小学校で89.3%、中学校でも89.0%を占めました。「学級会で話し合い、互いの意見のよさを生かして解決方法などを合意形成できるような指導」を行っている学校は各94.5%、93.2%に上ります。

主体的・対話的で深い学びは、さまざまな児童生徒がいる学級集団での「対話」も生かして、「深い」学びに至らせようというものです。それが、さらに今後の学びに向かわせる主体性に拍車をかける好循環を生むことが期待されます。各学校には、今後ますます授業改善に取り組み、一人ひとりを生かす実践に励んでもらいたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料(国立教育政策研究所ホームページ)
http://www.nier.go.jp/19chousakekkahoukoku/index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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