生物は暗記科目じゃない!用語1/4以下のワケ

高校の生物の教科書では遺伝子の「優性・劣性」を「顕性・潜性」に言い換えて……。こんな提案を日本学術会議が行った、というニュースをご覧になったかたも多いと思います。ただ、事は遺伝の問題にとどまるものではありません。
同会議は2017年にも、2,000語を超える用語が重要語とされてきた生物教科書の在り方を改めるよう提言し、その考え方は新しい高校学習指導要領(2022年度の入学生から全面実施)にも採用されています。
このほどまとまった報告書の改訂版では、2017年版の512語からさらに絞り込んで、494語を選定しました。重要語が4分の1以下にまで圧縮されたわけです。
生物という科目に、いったい何が起こっているのでしょうか。

「思考で取り組むべき学問」として

2017年版の報告書では、用語の選定を目指す理由について「生物学が暗記科目ではないというメッセージを送ることにある」としていました。今回の報告書でも、改めて「今こそ、生物学が、知識ではなく思考で取り組むべき学問であるという根本的な認識を取り戻す時である」とうたっています。

これまでの指導要領でも、覚えるべき生物用語を事細かに指定していたわけではありません。しかし、生物科学の飛躍的な進歩に伴って、実際の教科書では、太字などで示される重要語が2,000以上に上り、「生物学が暗記を求める学問であるという誤解」(今回の報告書)を生んでいることも事実のようです。

一方、新指導要領は、すべての教科・科目等で(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という「資質・能力の三つの柱」をバランスよく育成することを目指しています。そのため授業にも、「主体的・対話的で深い学び」を求めています。その上で、理科の「生物基礎」では200語から250語程度まで、「生物」では500~600語程度の重要用語を中心に指導すると明記されました。

報告書は、生物学がいつまでも「暗記科目」だと思われては「学習上の障害」となるばかりでなく、大学入試の科目選択でも敬遠されるなど深刻な影響を及ぼす……と懸念を示しています。

共通テストの出題でも鮮明に

その大学入試も、大きく変わろうとしています。報告書も述べている通り、2021年1月から大学入試センター試験を衣替えする「大学入学共通テスト」の2回の試行調査(プレテスト)では、用語穴埋め問題の廃止、思考力の重視という方向性が明確に示されています。

これは、生物にとどまる話ではありません。同じように暗記科目という印象が極めて強い日本史や世界史に関しても、「高大連携歴史教育研究会」が学術会議などと協力して、各3,400~3,800語にも及ぶ用語を半分に精選する案をまとめています。

生物や歴史に限らず、これまでのセンター試験では、暗記丸覚え型の勉強方法で、ある程度の点数が取れていたことも否定できないでしょう。しかし、それでは点数が伸び悩むばかりでなく、受験後にはきれいさっぱり忘れてしまうか、単に覚えているだけで応用がさっぱり利かない知識にとどまりかねません。新指導要領・共通テスト時代には、そんな勉強の姿勢も改める必要があるのです。

(筆者:渡辺敦司)

※報告「高等学校の生物教育における重要用語の選定について(改訂)」(日本学術会議ホームページ)
http://www.scj.go.jp/

※高大連携歴史教育研究会
http://www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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