留学には後押しが必要!?

最近の若者は「内向き」だと、よく批判されます。海外に留学しようとする意識が、新興アジア諸国などと比べても低いからです。しかし、いつまでも若者の意識のせいばかりにしていていいのでしょうか。また、若者の意識にも変化があるようです。

大学在学中の希望は多く

国立青少年教育振興機構は、日本と外国の子どもを比較した調査を数々実施してきました。このほど結果を発表した「高校生の留学に関する意識調査」は昨年9~11月、日本・米国・中国・韓国の4か国で同時に実施したものです。

それによると「留学したいと思わない」と回答したのは、日本48.6%、米国38.4%、中国42.6%、韓国31.7%と、日本の高校生が最も高くなっています。この数値だけを見ると、「ああ、やっぱり日本の若者は内向きだ」と思うのも仕方ありません。

しかし他の項目をよく見ると、「高校在学中に留学したい」と回答したのは、順に5.1%、7.7%、3.0%、16.3%と、韓国を除いて10%未満です。「高校を卒業したら、すぐに留学したい」では1.9%、6.6%、4.4%、18.1%と日本の高校生が最も少ないものの、「大学在学中に、留学したい」では各35.6%、35.0%、22.3%、24.6%と、むしろ日本の高校生が最も高くなっています。

「大学在学中に、留学したい」と回答した日本の高校生は、2011年の調査と比べて3.8ポイント増えています。確かに留学に消極的な高校生が半数近くを占めるものの、積極的な高校生も一定数あり、しかも徐々にですが増えているとも言えます。
留学の最も重要な目的を尋ねると、「語学の習得」が67.1%と他の3カ国に比べ突出しており、「学位の取得」(卒業)や「専門技術や資格の取得」を希望する割合は依然低いままですが、2011年調査と比べれば「専門技術や資格の取得」がやや増えています。

官民挙げた促進策も

留学に消極的な高校生がなかなか減らないのは、内向き意識のせいばかりとは限りません。在学中に留学したら大学を留年してしまったり、就職活動に出遅れて希望する会社に就職できなかったり、という心配も、大きな要因と考えられます。また、学費だけでも大変なのに留学費用も、となると大変な経済的負担です。

今は国を挙げて、グローバル人材の育成が求められている時代です。各大学でも留学を積極的に奨励するだけでなく、全員に留学を義務付ける大学や学部・学科も出始めています。また企業側にも、通年採用や秋季入社など留学経験者に配慮したり、多様な留学経験を積極的に評価したいという傾向が強まっています。
文部科学省が2013年10月から始めた官民協働のキャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」では、企業の寄付などを基に、大学生や高校生の留学を促進しようとしています。プログラム応募者は18年度、大学生で3,500人以上、高校生で2,000人以上となっています。

海外に出てみないと分からないことも、たくさんあるはずです。本気で日本にグローバル人材を増やしたいというなら、尻込みする生徒・学生の背中を押し、安心して留学機会を与えることも必要でしょう。それが「内向き」で過ごしてきた大人たちの責務だ、とさえ思えてなりません。

(筆者:渡辺敦司)

※高校生の留学に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較
https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/139/

※トビタテ!留学JAPAN
https://www.tobitate.mext.go.jp/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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