英語だけじゃない…数学検定にも脚光!?

大学入学共通テストの一環として、2020年度から受検が始まる英語の資格・検定試験に今、大きな注目が集まっています。しかし、大学入試改革で関心が高まっている検定は、英語だけではないといいます。どういうことなのでしょうか。

記述式の導入で求められる「思考力・判断力・表現力」

公益財団法人日本数学検定協会には最近、「実用数学技能検定(数検)」への問い合わせが増えているといいます。もちろん英語のように直接、共通テストの成績の一環として大学側に提供されるわけではありません。

共通テストでは、「国語」と「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」に、各3問の記述式問題が導入されます。このうち国語は、マーク式(200点満点)とは別の問題として出題され、点数ではなく、段階表示された成績が、受験する大学側に提供されます。この段階表示を点数に換算するのか、あるいはボーダーラインでの合否判定に使うかなどの具体的な扱いは、各大学に任されています。

一方、数学の記述式に関しては、マーク式問題と混在して出題され、採点も全体(100点満点)に含めます。このため、記述式への対策が必須になっているのです。
国語や数学に限らず、共通テストは、現在の大学入試センター試験以上に、思考力・判断力・表現力を問う出題が強化されます。そうした思考力・判断力・表現力等を育成するには、もともと記述式を採用している数検に取り組ませることがうってつけだ、という判断が、高校などにはある……と、同協会ではみています。

社会全体で高まる必要性

入試に限らず、社会全体で、数学の重要性が高まっています。同協会は、そうした動向をまとめた「急速に進む『数学』需要—数理イノベーション時代の到来」という資料を、ホームページに掲載しています。
それによると、2018年6月の文部科学省の省内タスクフォース(特別作業班、TF)以来、「数学」を重要視する報告書等が、政府部内や日本経済団体連合会(経団連)などから相次いでいます。そこでは、おおむね共通して▽文系と理系に分かれる「文理分断」からの脱却▽理数系はもとより芸術も含めて融合的に学ぶ「STEAM教育」▽情報科学や統計の基礎知識……の必要性が指摘されています。

というのも、少子化が進み、人類史上5番目の社会である「Society(ソサエティー)5.0」(超スマート社会)が到来することで、人工知能(AI)やデータサイエンス、IoT(モノのインターネット)などに対応する人材を育成することが、急務となっているからです。そうした基盤として不可欠になるのが、数学だというわけです。
新しい学習指導要領では、どの教科でも幅広い「資質・能力」((1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等)を育成することが求められます。小学校からプログラミング教育が始まる他、統計教育やデータ活用なども重視されます。
今後は、単にテストの解き方を覚えて点数さえ取れればいいという勉強方法ではなく、その教科ならではの見方・考え方を働かせた主体的な学習が、ますます求められます。これを機に、算数・数学の本当の面白さにも気付いてほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※日本数学検定協会「急速に進む『数学』需要—数理イノベーション時代の到来」
https://www.su-gaku.net/others/mathematical_innovation/?utm_source=emsan190606

※大学入学共通テスト実施大綱・大学入試英語成績提供システム運営大綱
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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