高校の普通科はどうなる?

政府の教育再生実行会議が、高校生の7割が通う普通科について、国が示す「類型の枠組み」を各校が選択するよう求める第11次提言をまとめました。これを受けて今後、文部科学相の諮問機関である中央教育審議会が、具体的な制度化の検討に入ります。
ところで普通科を改革すべきだとの議論は、今に始まったことではありません。どう考えればいいのでしょうか。

実行会議、4類型からの選択を提案

第11次提言をめぐっては2018年8月、「技術革新」と「高校改革」の二つのワーキンググループ(WG)を設け、今年1月には中間報告を公表していました。
提言では、中間報告では明示していなかった普通科の「類型」について、(1)予測不可能な社会を生き抜くため自らのキャリアをデザインする力の育成を重視するもの(2)グローバルに活躍するリーダーや国内外の課題の解決に向け対応できるリーダーとしての素養の育成を重視するもの(3)サイエンスやテクノロジーの分野等において飛躍知を発見するイノベーター等としての素養の育成を重視するもの(4)地域課題の解決等を通じて体験と実践を伴った探究的な学びを重視するもの……を例示しました。

また、人工知能(AI)の進展などに伴って到来する「Society(ソサエティー)5.0」(超スマート社会)の時代を生き抜くには、全生徒が文系・理系のどちらかに偏ることなく学ぶ必要性を強調。大学入試でも「文系・理系に偏った試験からの脱却」を目指すとしています。大学入試をめぐっては「高大接続改革」の下、2020年度に大学入学共通テストを導入することをはじめとした改革が進行していますが、今回の提言は、個別大学の入試にも影響を与えそうです。

過去にも議論や模索、30年来の課題

ところで高校普通科の在り方は、今回初めて検討されたわけではありません。1991年、中教審が答申で「総合的な新学科」の創設や「新しいタイプの高等学校」の奨励を提言。1994年度から総合学科が制度化されるとともに、普通科系でも国際科や情報科など特色ある学科やコースが全国に拡大しました。ただし高校の生徒数は1989年をピークとして急減期に入っており、こうした特色化も、高校再編時代を控えた「学校の生き残り策」という側面もありました。

一方、2000年代に入り、「ゆとり教育批判」に応える高校版の学力向上施策として、02年度からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)やスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi、07年度まで)が創設されます。また、14年度から始まったスーパーグローバルハイスクール(SGH)は、今年度より「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム」に引き継がれています。

この他、高校の授業料無償化を背景として2011年11月に設置された中教審の高等学校教育部会では、文科省事務局が▽社会経済活動の基盤を担う人材に必要な資質・能力の育成を目指す学校▽専門的職業人に必要な資質・能力の育成を目指す学校▽リーダー層やグローバル社会で活躍できる人材の育成を目指す学校▽芸術・スポーツ等の特別な才能を伸ばす学校▽自立して社会生活・職業生活を営むための基礎的な能力の育成を目指す学校……といった類型化を提案したものの、14年6月の審議まとめには盛り込まれなかった経緯もありました。
このように、30年来の課題とも言える高校の普通科改革。今回は、どこに向かうのでしょうか。 

(筆者:渡辺敦司)

※教育再生実行会議 提言
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/teigen.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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