「令和元年」こそICT環境整備を!

5月1日に令和元年を迎えました。さて教育の課題は何だろう……と考えた時、喫緊の課題は、学校のICT(情報通信技術)環境整備かもしれません。ほぼ平成の時代とともに歩んだ教育用コンピューターの整備は、約30年の間に大きな自治体間・学校間格差も生み出してしまったからです。
令和の時代にICT格差が学力格差につながらないよう、一刻も早く対策を講じる必要があります。

広がる自治体間格差

文部科学省の調査によると、2017年度末の段階で公立学校の教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は5.6人。2014~2017年度の4年間に総額6,712億円の地方交付税が措置されたこともあって2013年度末の6.5人に比べれば前進しているとはいえ、わずか0.9人分。数値目標の3.6人(各学校でコンピューター教室に40台、各普通教室に1台、特別教室に6台、可動式のコンピューター40台が整備できる計算)には遠く及びませんでした。

とりわけ深刻なのが、自治体間格差です。都道府県単位で見ると、1台当たり1.8人から7.9人まで。市区町村別になると、0.1人から17.8人までに広がってしまっています。隣り合う自治体で整備状況が雲泥の差、ということも珍しくありません。

なぜこんな事態が起こっているかというと、地方交付税は使い道が限定されず、一括して自治体に交付されるため、きちんとICT環境整備の予算を付けない限り、橋や道路など他の財源に回されてしまうからです。とりわけ昨今、教育予算も首長や議会の意向に大きく左右されます。ICT教育が重要だと考えれば整備も一気に進みますが、「どうせ学校では先生が使わずに、ほこりをかぶるだけだろう」などと旧態依然のイメージで構えていては、いつまでたっても整備が進むことはありません。

新指導要領が始まる前に予算化が不可欠

あえて「令和元年」を持ち出したのは、次の令和2(2020)年度には小学校で新しい学習指導要領が全面実施となるからです。そこでは、プログラミング教育の必修化が始まるだけでなく、各教科の授業でもICTを活用することが求められます。

そのため地方交付税にも、新たな整備計画が立てられています。2018~22年度の5年間、3クラスに1クラス分程度(1日1コマ分程度、使いたい時に1人1台で学べる環境)の整備などを実現するため、毎年1,805億円(総額9,025億円)が措置されます。しかし、各自治体で予算化する必要があることには変わりがありません。

ICTは現在でも生活や仕事になくてはならない存在ですが、人工知能(AI)などの活用が当たり前になる「Society(ソサエティー)5.0」の時代には、自在に使いこなせないと社会的な活躍にも格差を生みかねません。また、教科の授業でもICT活用が広がれば、学力をさらに伸ばすことが期待できる一方、環境整備の遅れた学校との学力格差が心配です。

せっかく今年度から学習者用デジタル教科書が制度化されたのに、教育用コンピューターが整備されていなければ導入することもできません。今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で中学校に英語が出題されたのに、コンピューターの問題で「話す」力の調査に参加できなかった学校が少なくなかったことも、記憶に新しいところです。

統一地方選挙も終わったところです。ぜひ令和元年のうちに予算化して整備を急ぐよう、有権者としても動向に注目する必要があるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※教育の情報化の推進(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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