学ぶ力、保護者世代も身に付けていない!?

経済同友会が、子どもたちの多様な学びを進めようと「自ら学ぶ力を育てる初等・中等教育の実現に向けて~将来を生き抜く力を身に付けるために~」と題する報告書をまとめました。
年齢に応じた学年で学ぶ「年齢主義」を改めて「修得主義」に転換することや、義務教育を終えた能力の高い10代を「プロ」と認めて企業と契約(採用)することを求めるなど、大胆な提案をしています。一方、その中には、大人にとって耳の痛い話もあります。

平成の初めに求められたのに…

報告書では、1989(平成元)年3月に告示された学習指導要領が「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実に努めなければならない」としていたのに、平成の30年間を経て、その指導要領で教育を受けた社会人が「こうした能力を十分備えているとは言い難い」と厳しく指摘しています。

1989年告示の指導要領といえば、2002年度から順次、全面実施になったものです。「ゆとり教育」だという批判が今もありますが、同友会では本来の趣旨については大いに賛同しているようです。
そのうえで、経営者が求めている人材は(1)自身の関心・強みを特定し、アプローチを工夫して結果が出るまでやり抜く責任感と意思の強さを持った人材(2)加速する技術革新を適切に利活用できる倫理感と社会性を有する人材(3)多様性を受け止める寛容さと自身を表現する力を有する人材……であり、企業に所属するかどうかを別にしても、こうした資質・能力が将来、社会を生き抜くうえでますます重要になるという考えを示しています。

「ゆとり」か「詰込みか」を越えて

2008年告示の指導要領では、減らし過ぎた授業時数や学習内容を一部復活させながらも、「『ゆとり』か『詰め込み』かといった二項対立」(08年1月の中央教育審議会答申)を乗り越えることを目指しました。2017年告示の新しい指導要領(2020年度から順次、全面実施)も、この考え方を踏襲しています。

しかも新指導要領は、グローバル化や急速な情報化、技術革新など社会の変化を見据えて、子どもたちがこれから生きていくために必要な資質や能力を、教科横断的に身に付けさせることを目指しています。
資質・能力は、(1)何を理解しているか、何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得)(2)理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)(3)どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養)……という、三つの柱で構成されています。
これが、同友会の報告書の考え方と方向性が一致していることは言うまでもありません。あとは、そうした理念をどう実現するかです。

学校にも教育を変える努力をしてもらうことは、もちろんです。しかし社会に出てこそ痛感する資質・能力の必要性を子どもたちに伝えるのは、社会の先輩である保護者が最もふさわしいのではないでしょうか。「ゆとり世代だから」などと言っている場合ではありません。

(筆者:渡辺敦司)

※自ら学ぶ力を育てる初等・中等教育の実現に向けて~将来を生き抜く力を身に付けるために~
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2019/190403a.html

※学習指導要領「生きる力」(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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