小学校プログラミング教育の課題は?

新年度を迎えました。小学校で「プログラミング教育」が必修化される新学習指導要領の全面実施まで、あと1年です。しかし教育現場は、教科化される英語の時数増などの対応に追われ、プログラミング教育にまで手が回っていない学校も少なくありません。課題は何なのでしょうか。

全然進んでいなかった1年前

一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)は毎年、教育・企業関係者を集めて「教育の情報化推進フォーラム」を開催しており、今年3月も全国から約1,000人が集まりました。その2日間を締めくくる総括パネルディスカッションのテーマは「プログラミング教育の課題と展望」でした。コーディネーターを務めた赤堀侃司会長は冒頭、「プログラミング教育は待ったなしだが、課題は山積している」と述べました。

1年前の調査(2018年2月時点) ですが、文部科学省が全都道府県および、全市区町村教育委員会にプログラミング教育への取り組み状況を4段階に分けて尋ねたところ、回答のあった教育委員会のうち、情報収集も含めて「特に取組をしていない」(ステージ0)が57%を占めていました。
調査の直後に文科省が『小学校プログラミング教育の手引(第1版)』を発行したため(同年11月には第2版 を発行)、現在ではステージ0はほとんどないとみられます。しかし、「担当を決めて検討中」(ステージ1)と「研究会や研修を行っている」(同2)がともに13%、「授業を実施している」(同3)が16%と6校に1校程度という状況でしたから、やっと研究や試行が広がり始めた1年間だったと推測されます。

先進自治体でも山積

茨城県つくば市といえば、早くから情報教育の先進地域として教育関係者には知られています。しかし同市総合教育研究所の中村めぐみ指導主事は、必修化するには(1)ICT機器整備(2)指導者・ICT支援員(3)教員研修・外部研修……の各方面で「まだまだ課題が山積している」と悩みを打ち明けました。
それは、政令指定都市であっても同じです。相模原市教育センターの渡邊茂一指導主事は2016年度の段階 で、同市の教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数が10.0人(全国平均値5.9人、国の整備目標値3.6人)で、1,817市区町村中1,679位と苦戦していたことを紹介。
その後、プログラミング教育を施策に入れたことにより、全校に実施が広がり、2018年度には先生たちが自主的に授業づくりを始めたといいます。やはり学校任せにするだけでなく、自治体主導で計画的に進めることが必要です。

そもそも整備が遅れているICT環境を、早期に整備することも不可欠です。文科省の中川哲・初等中等教育局プログラミング教育戦略マネージャーは、プログラミング教育の教材としてよく使われるScratch(スクラッチ)3.0が、ウィンドウズのインターネットエクスプローラー(IE)では動作しないことに注意を促しました。あと1年で、そうした確認と最新機器の整備も急がねばなりません。

小学校プログラミング教育は「プログラミング的思考」の育成が主目的ですが、兼宗進・大阪電気通信大学教授は、中学校の技術・家庭 では情報通信ネットワークを利用したプログラミング教育が必修化されたことに注意を促しました。高速インターネット通信環境も含めた整備が期待されます。

(筆者:渡辺敦司)

※プログラミング教育(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm

※2018年度 教育の情報化推進フォーラム
https://www.japet.or.jp/event/

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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