「スマートスクール」ってどういうもの?

教育分野で、ICT(情報通信技術)はもとより人工知能(AI)、ビッグデータなど新しい技術を活用する 「EdTech(エドテック)」(Education+Technologyの造語)が注目されています。授業だけでなく、多忙化が深刻な先生方の「働き方改革」にも欠かせません。 そうした中、総務省は「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」、文部科学省は「次世代学校支援モデル構築事業」を連携しながら実施しており、このほど合同の成果報告会 を開催しました。
「スマート」といえばスマートフォン(スマホ)にみられる通り、「賢い」という意味です。次世代のスマートな学校とは、どういうものなのでしょう。

校内データを統合して指導に生かす

両事業は2017年度から始まっており、1年目に検討したシステム開発を基に、現在は実践の蓄積がされつつあります。授業・学習系と校務系システムを結び付け、学校現場で蓄積された大量のデータを相互に関連させることで、教育面でも業務面でも大きな効果を生み出そうとしています。

たとえば福島県新地町教育員会では、アプリケーション(アプリ)を使って児童生徒が行ったコミュニケーションの様子を、学級生活に対する満足度を測定した調査と合わせて分析。自己評価の低い児童生徒に対しては、教科学習でも間違いを指摘するだけでなく、できたことを認めて励ます丁寧な対応につなげています。また、家庭学習の内容や実施時間のデータを保健室の利用状況データと結び付ければ、学習指導はもとより、夜更かしして勉強しないようにアドバイスするなどの教育相談にも生かしています。

愛媛県西条市教育委員会では、教育データを「見える化」するため、「児童生徒カルテ」「クラスカルテ」「学年カルテ」「自治体カルテ」と呼んでいる画面を作成。先生方の授業改善や授業研究はもとより、校長など管理職が学校経営に生かすことができ、活用した学校では市独自の学力調査でも成績の向上がみられたといいます。

ノウハウ継承で「日本型教育」も維持

学習指導と生活指導を一体で行うことは、「日本型学校教育」の大きな特長として近年、世界から注目されています。一方で、21世紀に求められる資質・能力を育成するための高度な授業はもとより、子どもの課題がますます複雑化・困難化する中、クラスに担任1人など児童生徒数を基本に配置してきた現在の基準では、一人の先生にかかる負荷が昔より増大し、それが長時間労働に拍車を掛けていることも間違いありません。

さらに、第2次ベビーブーム時に大量採用されたベテラン層が大量退職し、若い先生が急増していることで、これまで経験と勘に頼ってきた学校の指導力が落ちてきたという指摘もあります。
奈良市教育委員会は、統合データベースを構築し、データを基に話し合うことで、教員の資質能力を向上させるだけでなく、ベテラン教員のノウハウを継承させることを狙っています。また、データから指導する対象者を絞り込むことで、子ども目線の声掛けを即時にできるようになるといいます。

このようにEdTechは、多くの可能性を学校にもたらしてくれます。もちろん、その有効活用には1人1台の端末や高速インターネット通信、クラウドなど環境整備が欠かせません。ハード、ソフト両面の充実で、ぜひ「賢い」教育をしていってもらいたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※スマートスクール・プラットフォーム実証事業(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/smart.html

※次世代学校支援モデル構築事業(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1387543.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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