世界と一緒に質の高い乳幼児教育を!

10月から、幼児教育の無償化が始まります。消費増税分の一部を使ってでも財源を確保したのは、それだけ幼児教育が、その後の教育はもとより人生にも大きな影響を与えるからです。何が課題なのでしょうか。世界と一緒に考えてみましょう。

生涯にわたる「非認知能力」を育む

文部科学省や外務省などは先ごろ、「持続可能な開発目標達成に向けた国際教育協力日本フォーラム」を開催しました。持続可能な開発目標(SDGs)は政府や民間企業を問わず取り組むべき課題ですが、16回目となる今回は「持続可能な成長を担う次世代の教育の現状と課題—乳幼児期を中心に—」をテーマとしました。

近年、知識や思考力などの他に「非認知能力」の重要性が指摘されています。非認知能力は、忍耐力や社会性、自尊心など幅広い力や姿勢を含み、学歴や仕事など将来の成功の支えとなる ものです。2018年度から全面実施となった幼稚園教育要領や、20年度以降に全面実施となる小学校などの学習指導要領でも「学びに向かう力」として位置付けられているものです。

フォーラムで講演した浜野隆・お茶の水女子大学大学院教授は、「幼児教育が単なる小学校への準備教育ではなく「生涯にわたる人格形成の基礎を培う」ものだと強調しました。しかも、日本でも深刻な「子どもの貧困」問題に対しても、経済的に不利な家庭環境を克服する力になるというのです。医者や弁護士、国家公務員1種など難関試験を突破した人の保護者を調べても、幼児期には思い切り遊ばせたり、絵本の読み聞かせをしたりするなど、就学前の教育に意識的に取り組んだという研究も紹介しました。遊びを通して学ばせるというのは、日本の幼児教育の大きな特質でもあります。

浜野教授は、非認知能力を高めるためには、子どもに(1)よいところを褒めるなどして自信を持たせる(2)努力することの大切さを伝える(3)最後までやり抜くことの大切さを伝える……とアドバイスしました。0~2歳の乳児期には、無条件に受け入れられ、愛される習慣が自己肯定感につながり、社会性や想像力、思いやりにつながるといいます。
ベネッセ教育総合研究所の高岡純子・次世代育成研究室長も、「幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査」をもとに、年少児から小学校までの成長の過程で、どのような力が育っていくのかのメカニズムを解説しました。」

持続可能な社会にも貢献

SDGsは、誰一人取り残さない社会の実現を目指して「飢餓」「保健」「経済成長・雇用」「イノベーション(技術革新)」「気候変動」など17の目標を掲げています。中でも「教育」はすべての目標の達成に貢献するものとされています。浜野教授も、幼児教育が他の開発目標と関係が深いことを強調しました。

乳幼児教育の充実は開発途上国にとって喫緊の課題ですが、アフリカ乳幼児期ネットワークのリネット・オケンゴ事務局長は、世界中の人を穴の開いた同じ船に乗っている状態に例え、先進国も含めた共通の課題だと指摘しました。乳幼児教育の充実は、個人だけでなく人類全体の幸福につながる意義を持っています。

無償化に際しても、保護者の教育費負担を軽減させることにとどまらず、教育や保育の質を充実させる契機としてほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※持続可能な成長を担う次世代の教育の現状と課題—乳幼児期を中心に—
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/01/attach/1413034.htm

※幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査
https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3684

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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