学校を児童虐待の安全網に

1月に千葉県野田市で起こった痛ましい女児の児童虐待死事件が、大きな社会問題となっています。政府は2月8日に関係閣僚会議を開いて1カ月以内の緊急安全確認を行うことを決めました。事件をめぐっては、児童相談所の判断のみならず、同市教育委員会が父親に女児が学校に提出したアンケートの写しを渡すなどの対応も問題になっており、文部科学省もタスクフォース(特別作業班、TF)を設置するなどして対応の強化に乗り出しました。
深刻化する児童虐待を、教育問題としてどう考えればいいのでしょうか。

早期発見できる「アドバンテージ」

まず確認しておきたいことは、今回の事件が発覚したきっかけが、女児の通う市立小学校でのいじめアンケートだったということです。
児童虐待防止法は、児童虐待を発見した場合の通告義務を広く国民一般に課していますが、とりわけ職務上、発見しやすい立場にある者の中に医師や弁護士などと並んで「学校の教職員」を挙げ、早期発見の努力義務を規定しています。また、児童福祉施設だけでなく学校にも、児童虐待防止のための教育や啓発に努めることを求めています。

学校での児童虐待防止に関しては、文科省の調査研究会議が2006年5月の報告書で、学校には▽学校数や教職員数が、児童福祉施設や警察などと比べても規模が圧倒的に大きい▽教職員は日常的に子どもたちと長時間接し、変化に気づきやすい▽養護教諭や生徒指導主事、スクールカウンセラーなどのチームで問題解決に当たることができる……など「学校のアドバンテージ」があると指摘しています。
子どもの貧困対策でも、学校をプラットフォーム(基盤)とすることが、政府の大綱 でも明記されています。同様に児童虐待でも、学校が子どものセーフティーネット(安全網)となる役割に期待が高まっていると言えるでしょう。

機能強化の視点が不可欠

そんな中で心配なのは、今の学校に、子どものちょっとした変化に気付く余裕があるのかということです。

学校をめぐっては、小学校で約3割、中学校で約6割の教員が「過労死ライン」を超えて長時間働いている過酷な勤務実態が明らかになっています。1月末の中央教育審議会答申 では引き続き業務の削減が提言されましたが、学習指導はもとより「児童生徒の人格の形成を助けるために必要不可欠な生徒指導・進路指導」や「保護者・地域等と連携を深めながら……生徒指導の実施に必要な学級経営や学校運営業務」も、学校が担うべき業務として改めて明確にしています。

児童虐待に代表される通り、子どもをめぐる状況が複雑化すれば、そうした新しい課題にも対応できる資質・能力を高める必要性も出てきます。先生方に研修を受けてもらうにも、その機会を確保することが不可欠になります。どうやって児童虐待防止の取り組みを進めてもらうか、人的配置も含め、その機能強化という視点も忘れてはならないでしょう。

ちなみに先の文科省の調査研究会議報告書では、学校のアドバンテージとして「教育という観点から、家庭や保護者に対して働きかけをする事ができること」も挙げられています。児童虐待を発見した場合の通告義務は国民一般にもあるのですから、保護者にとっても無視できません。ともに児童虐待を防ぐ態勢づくりを考えていきたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※児童虐待防止対策(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/index.html

※児童虐待(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302913.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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