デジタル教科書、制度化されるけど…

教科書の内容をパソコンやタブレットに取り込んだ「学習者用デジタル教科書」が、2019年4月から制度化されます。これに合わせて文部科学省は、効果的な活用の在り方を示したガイドラインを作成しました。主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)時代に絶大な効果を発揮することが期待されるデジタル教科書ですが、まだまだ課題は山積しています。

紙と併用、しかも授業の一部に限る

スマートフォン(スマホ)をはじめとしたICT(情報通信技術)機器の普及に伴い、今や書籍もデジタルで読むのが珍しくない時代。進研ゼミがタブレットでも提供されているように、デジタル教材で学習することも普通になっています。
しかし、児童生徒に学力を確実に付けさせる責任を負う学校では、「主たる教材」として紙の教科書の使用が義務付けられ、義務教育(小・中学校)では無償給与も行われています。先生が電子黒板に教科書の内容を提示する「指導者用デジタル教科書」が普及していますが、あくまでこれは教材扱いです。
最近、問題になっている「重すぎるランドセル」の解消のためにも、学習者用デジタル教科書の普及を急ぎたいところです。しかし、さまざまな課題が山積しています。

そもそも学習者用デジタル教科書が制度化されるといっても、各教科の授業の一部(2分の1未満)で、紙の教科書に代えて使用することができるという「併用制」です。これは、教科書の重要性を考えて、いきなりデジタルに全面移行するよりも、まずは一部から始めて段階的に進めよう、という考えからです。
また、デジタル教科書といっても、内容は紙とまったく同一内容です。画像や音声を無償教科書のコンテンツと位置付けるには編集のみならず検定にもコストが掛かる他、掲載される写真や文章などの著作権処理も問題になってきます。音声や動画にもリンクしていますが、その部分はあくまで教材扱いです。このようにデジタル教科書自体が発展途上であり、その意味でも段階的な導入とすることにしたのです。

まずはICT環境の整備が急務

さらに、デジタル教科書の普及を阻む課題があります。そもそも自治体や学校でICT環境の整備が進んでいないことです。文科省の調査(2018年3月現在)によると、公立学校の教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は5.6人で、目標値の3.6人には及びません。また、都道府県によって1.8人から7.9人まで、整備状況にも差が開いています。
これは、ICT環境の整備が補助金と違い、使い道が限定されない一般財源として地方交付税で措置されているため、自治体で予算化しなければ、いつまでたっても整備されないからです。文科省は総務省との合意で、2018~22年度に総額9,025億円を交付税措置する整備5カ年計画を進行させており、1日1コマは1人1台で学習できる環境づくりを目指しています。まずはそうした環境が整備されなければ、無償化の対象にはならないデジタル教科書の予算化どころではありません。

ガイドラインにもある通り、学習者用デジタル教科書が導入できれば、▽ペンやマーカーで書き込むことを簡単に繰り返す▽紙面に関連付けてドリル・ワークシート等を使用する▽書き込みの内容を教師や児童生徒間、学校・家庭間で共有する……など、多様な可能性を秘めています。来年度に向けて、積極的な予算化を求めたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/139/houkoku/1412207.htm

※教育の情報化の推進(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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