理数系、男女に能力差はないはずなのに…

独立行政法人国立女性教育会館がこのほど、「学校教員のキャリアと生活に関する調査」の結果を公表しました。女性教員の活躍を後押しするための研究の一環として実施したものですが、その中に気になる項目があります。男子のほうが理数系教科の能力が高いと考える小中学校の教員が5人に1人いて、しかも女性教員や若い教員に、その傾向が強いというのです。

女性や若い教員に多く

調査は今年1~2月、全国の公立小・中学校から各1,500校を抽出して実施しました。男性教員も含めて仕事のやりがいや在校時間、家事・育児など幅広く質問して、管理職になる率が低い女性教員の問題を浮き彫りにしようとしています。

設問の中に、男女共同参画に関わる考え方を項目ごとに4段階で尋ねるものがあります。そのうち「理数系の教科は、男子児童生徒のほうが能力が高い」かどうかについて、「そう思わない」「あまりそう思わない」と回答したのは計77.2%だったのに対し、「そう思う」「ややそう思う」は22.8%でした。とりわけ女性教員(25.6%)のほうが男性(19.7%)より高く、男女とも若い教員ほど割合が高くなる傾向にあります。20 代では女性教員の31.8 %、男性教員の27.2 %に上っています。
もちろん多くの教員は理数系の能力に差はないと考えているわけですが、たとえ少数派とはいえ「女子は理数系の成績が悪くても仕方がない」と考えている教員がいるとすれば、成績をそれ以上伸ばす可能性を抑えてしまう恐れがないとは言えません。それが結果として女子の理系進学を阻んでしまうとしたら、さらに問題です。

環境と意識を変える必要

理数系の能力をめぐっては、代表的な国際的学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)の実施で知られる経済協力開発機構(OECD)が2015年にまとめた報告書で「生まれつきの能力に性別はない」「平等な機会が与えられれば、男女にかかわりなく、同じように最高の成績を収めることができる」と断言しています。
同会館の内海房子理事長も、各国の男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」(世界経済フォーラム作成)に着目。2017年時点で日本は144カ国中114位ですが、アイスランド・ノルウェー・スウェーデンといった上位の国では女子のほうが数学の成績は高く、日本も「男女共同参画社会になっていれば、男女差はないはずだ」と、環境のほうを変えるよう指摘しています。

保護者世代が進学や就職をするころには、まだ「女性が理系に進学しても、就職に不利になるのではないか」といった風潮が色濃くあったことでしょう。「理数系科目ができなくてもいい」という暗黙の意識が、子どもにも伝わっていたことはなかったでしょうか。
そんななかで学校の教員は、昔から女性も男性と同じように活躍できる職場だと見られてきました。

しかし小学校では教員のうち女性が6割と多いのに、女性の校長は2割にすぎません。女性教員の8割が子育て期に家事や育児の半分以上を担っていたという事情もありますが、「男性のほうが女性より管理職に向いている」と思う女性(29.7%)が男性(21.3%)より多いなど、やはり教員の世界にも性差の意識が根強くあります。
子どもの可能性を狭めないためにも、家庭と学校が一体になって意識を変え、子どもの勉強や進路選択を積極的に励ます必要があるのではないでしょうか。

(筆者:渡辺敦司)

※国立女性教育会館「学校教員のキャリアと生活に関する調査」
https://www.nwec.jp/research/hqtuvq0000002ko2.html

※OECD「PISAから見るジェンダーと教育」
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/early-gender-gaps-drive-career-choices-and-employment-opportunities-says-oecd-japanese-version.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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