先生の働き方、1年単位で調整?

 小学校で3割、中学校で6割の「過労死ライン」に置かれるような厳しい公立学校の先生の「働き方改革」を進めるため、中央教育審議会の部会では、学期中の忙しかった分を長期休業中に休めるようにする「1年単位の変形労働時間制」を導入するかどうかが検討されています。これからの先生の働き方は、どうなるのでしょうか。

残業の多くは先生の「自発的」な判断

 一般労働者を含めた働き方改革は、政府全体の課題です。今年6月には「働き方改革関連法」が成立し、残業に▽年720時間まで▽月100時間未満▽複数月平均80時間まで……といった上限も設けられました(大企業は2019年4月、中小企業は20年4月から)。
 学校の先生も基本的には労働基準法の適用を受けるのですが、公立学校の先生には「残業代」が出ない仕組みがあります。子どもの学習指導や生徒指導に関わる専門職として、必ずしも1日8時間で打ち切るわけにはいかないことが多いからです。そこで、時間外勤務(残業)は他の日に割り振ることを原則とし、校長は「超勤4項目」((1)校外実習など (2)修学旅行などの行事 (3)職員会議 (4)非常災害など)を除いて、残業を命じてはいけないことになっています。残業する場合は、あくまで先生が専門家として自発的に判断したと見なされるのです。
 残業代が出ない代わりに、毎月の給与に一律4%の「教職調整額」が上乗せされます。ただし、これは月の残業時間が平均8時間程度だった1966年の勤務実態調査をもとに決めたもので、週だけでも平均20時間近く残業している現在(2016年度調査)とかけ離れた実態であることは言うまでもありません。
 こうした制度が、先生の長時間労働を助長している面があります。これをどう抑制していくかが、中教審の課題です。

昔に比べて自由が利かない

 1年単位の変形労働時間制は、1日につき10時間まで、1週間につき52時間までなどの制限を付けたうえで、繁忙期の労働時間を閑散期に回せるようにする制度です。ただし現在、公立学校教員を含めた地方公務員は、1カ月単位の変形労働制は認められているのですが、1年単位は適用除外となっています。中教審では、これを教員に適用できるようにしたらどうかと検討しているわけです。
 こう書くと「先生も夏・冬休みは休めるのでは」と思うかもしれません。しかし有給休暇を除いては、研修会・研究会などに参加したり、自主的な勉強をしたりするために学校を離れることが認められるだけで、必ずしも休んでいるわけではないのです。昔は個々の先生が比較的自由に研修方法や場所を選ぶことができましたが、今では校内の業務だけで1日8時間が過ぎてしまうことも普通です。
 しかも新しい学習指導要領では、小学校英語で1コマ分増える授業時間を休業中に実施することも認められるなど、夏・冬休みといっても先生の「休み」に充てられる余裕は狭まっています。

根本的には、1人の先生が抱える仕事が多すぎることが問題です。ただ、財政難で先生の数が増やせないから、せめて変形労働制で休みを増やせるように……という事情もあります。中教審で一定の取りまとめが出ても、本当の意味での「改革」はまだ遠いようです。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 学校における働き方改革特別部会 第17回配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/siryo/1409717.htm

※同 第18回配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/siryo/1410185.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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