私大は既に「すみ分け」進む

主な大学入学年齢である18歳人口の減少で、現在782校を数える大学は、将来の在り方が問われています。中央教育審議会も、今年生まれた子どもが4年制大学を卒業するころの社会を想定した「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を検討しており、11月26日に答申をまとめる予定です。とりわけ影響があるのは、大学数や学部学生数で8割近くを占める私立大学です。しかし私立大学は既に、将来を見据えた改善の努力が進んでいるようです。

規模や地域で重点に差

124大学が加盟する日本私立大学連盟(私大連、会長=鎌田薫・早稲田大学総長)は、中教審に先立って今年4月、「未来を先導する私立大学の将来像」と題する提言をまとめました。10月に開催した「私大連フォーラム」で、常務理事の田中優子・法政大学総長は、提言の取りまとめのために行った加盟大学アンケート(2017年9月実施)の結果を紹介しました。
各大学が最も重視している役割を7項目から選んでもらったところ、▽大規模大学では「知識基盤社会を支える高度で多様な教育の提供」(45%)や「世界(グローバル化)を視野に入れた取り組み」(36%) が突出して高かったのに対して、中規模大学では「地域社会に貢献する人材の育成」(21%)も高く、小規模大学では「若者が充実した人生を送るための能力の涵養」(33%)や「地域社会に貢献する人材の育成」(33%)が突出している▽東京の大学では「世界(グローバル化)を視野に入れた取り組み」(38%)が他の地域に比べて突出しているのとは対照的に、近畿圏では「地域社会に貢献する人材の育成」(18%)も多く、「世界(グローバル化)を視野に入れた取り組み」(12%)は低い…などの特徴が明らかになりました。
これについて田中総長は、規模や地域などによって私立大学は既に特色や機能の違いが見られ、国によって類型化されなくても自主性によって多様性を生かしながら役割を分担し、緩やかなすみ分けを行っていると強調しました。

昔のイメージや偏差値での大学選びは禁物

こうした背景には、私立大学がもともと建学の精神に基づいた教育を続けてきたことに加えて、しばらく下げ止まっていた18歳人口が急減期に入る「2018年問題」に対応するため、努力してきたことがあります。
ところで、田中総長が「国によって類型化されなくても」と言ったのは、中教審が2005年に出した答申「我が国の高等教育の将来像」で、各大学に対して「機能別分化」を求めたことを指します。具体的には、(1)世界的研究・教育拠点 (2)高度専門職業人養成 (3)幅広い職業人養成 (4)総合的教養教育 (5)特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究 (6)地域の生涯学習機会の拠点 (7)社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)…から幾つかを選んで、自分の大学の特色を出すように、ということでした。

私立大学は、建学の精神は変わらないものの、力を入れる教育の面では、保護者が学生だった時代とすっかり変わっている可能性があります。昔のイメージや偏差値だけで大学選びをすることは、もうできません。大学案内で各大学のポリシー(方針)をよく読み、説明会で話を聞きながら、受験生に合った大学を見つける必要が高まっていると言えます。

(筆者:渡辺敦司)

※私大連提言「未来を先導する私立大学の将来像」
http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/others_c/2018/04/25/22214

※中教審 大学分科会 将来構想部会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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