「21世紀の子」の高校生活は?

「21世紀出生児縦断調査」をご存じでしょうか。
厚生労働省が2001年に生まれた子どもを毎年、継続して追跡する極めてユニークなプロジェクトです。対象者が17年に高校1年生となったことを契機に、文部科学省が調査を引き継いで実施しました。21世紀に生まれた初の子どもの高校生活は、どうなっているのでしょうか。

依然として学習意欲に課題

 調査結果によると、平日の学校外での勉強時間(塾も含む)は「しない」が25.4%と4人に1人を占め、「1時間未満」も29.3%と、決して多くはありません。前回調査の中学3年生時には各6.0%、15.4%でしたから、やはり高校受験が終わってしまうと、とたんに学習意欲も失われる傾向は、いまだに変わっていないようです。

 「学校の勉強は将来役に立つと思う」かどうかを尋ねても、「とてもそう思う」との回答が前年比4.4ポイント下の27.4%と、中学1年生の時の37.7%から年々低下しています。受験勉強を経ても、勉強の有用感は高まっていないのが現状です。一方で、「授業の内容をよく理解できている」かどうかに「とてもそう思う」と回答したのは、前年の25.1%から13.8%に落ち込んでいます。同様に、「ためになると思える授業がたくさんある」は23.1%(前年25.7%)、「楽しいと思える授業がたくさんある」も20.7%(同26.3%)にとどまっており、高校の授業にも課題がありそうです。

 文部科学省が進める高大接続改革は、大学入試改革ばかりに注目が集まりがちですが、いかに高校生に意欲的に勉強させ、上級学校や社会で必要な資質・能力を身に付けさせるかの高校教育改革も、負けず劣らず重要です。2019年度から始まる「高校生のための学びの基礎診断」の活用も含め、子どもたちに自律的な勉強を促す機運をもっと盛り上げる必要があるでしょう。

関連調査も参照して解明を

 子どもの勉強時間などを継続的に調査しているものとしては、ベネッセ教育総合研究所が1990年以来5回にわたって実施している「学習基本調査」があります。
2015年に行った最新の調査では、高校生の平日の勉強時間は「ほとんどしない」14.8%、「およそ30分」12.4%、「1時間」18.6%で、9年前の前回調査(06年)と比べれば平均学習時間が70.5分から84.4分へと、96年の水準を超えて「V字回復」したことが注目されました。しかし今回の21世紀出生児縦断調査の結果と併せて考えると、少なくとも高校生の学習状況はまだまだ安心できるような状況にはないと言うべきでしょう。

 一方でベネッセ教育総研は2015年以降、東京大学社会科学研究所と共同で、小学1年生から高校3年生までの子どもと保護者を毎年調査する「子どもの生活と学び」研究プロジェクトを実施しています。学年が上がっても継続的に調査対象とする仕組みで、21世紀出生児縦断調査と同様、同じ子どもを追跡できる利点があります。

 2001年生まれの子どもは、小学4年生の時から現行の学習指導要領で学んできました。そうした子どもたちが、家庭環境も含め、幼少期からどのような成長と学びを遂げてきたかを分析できるのは貴重です。ベネッセ教育総研をはじめとした関連する調査も参照しながら、その成果を一人ひとりの成長と学びを促すような教育施策につなげていってほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児) 第16回調査
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa08/21seiki/kekka/1408263.htm

※ ベネッセ教育総合研究所 第5回学習基本調査
https://berd.benesse.jp/up_images/publicity/pressrelease_0128.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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