国立大学の「法人統合」は何のため?

 文部科学省は先ごろ、「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」を発足し、1大学1法人が原則の国立大学法人を統合する制度の検討に乗り出しました。そもそも、国立大学の「法人」とは何でしょう。今なぜ、法人統合が必要なのでしょうか。

自律的な運営も目指した「国立大学法人」

 大学志望者やその保護者にとっては、「国立大学法人」と言われてもピンとこないかもしれません。実際、2004年に国立大学が法人化されても、外見上そう変わりはなかったからです。
 法人化以前の国立大学は、旧文部省・現文部科学省の内部機関でした。学問の自由を背景にした大学の自治が尊重されるにしても、法的には文相・文科相の指揮監督下に置かれ、予算要求にも国の意向がかなり反映されていました。教官をはじめとした職員も当然、国家公務員でした。

 それが1996年からの行政改革論議の中で、国家公務員の削減が課題になり、ターゲットとなったのが、職員数の多い国立大学でした。それに対して文科省は2001年、国立大学の再編・統合とともに、法人化によって職員を国家公務員から外すプランを打ち出しました。
 ただし法人化は、行政のスリム化にとどまりません。国直轄を脱し、学長=法人理事長の権限を強めるなど、各大学の自律的な運営も目指すことにしました。文科相の関与は、6年ごとの中期目標策定や中期計画の認可などに限られました。予算面でも、国からの運営費交付金を「渡し切り」とし、国は使い道に口を出さないし、次年度繰り越しも可能になりました(それまでは単年度で使い切ることが原則)。

運営費交付金の削減が痛手、経営基盤強化へ

 ただ、法人化後すぐに想定外の問題が起こってきます。主な財源である運営費交付金が、財政難を理由に毎年約1%ずつ減額されたのでした。
 法人化により自主財源の獲得など予算上も自由度が高まったとはいえ、大学によっては、企業との共同研究がやりやすいなど「稼げる」 学部・大学院を持っているとは限りません。とりわけ教員養成学部をはじめとした学生の教育が中心の単科大学などは、不利な立場に置かれます。

 近年は政策の転換によって運営費交付金の削減は止まりましたが、それでも限られた財源を捻出するために内部努力が行き過ぎて、研究費の削減はもとより、常勤職員の減少に伴って若手研究者の雇用が不安定になり、将来的には研究力が低下してしまうのではないかという不安も高まっています。
 そうした中、2040年に向けた大学の在り方を検討していた中央教育審議会は今年6月、経営基盤を強化するために「1法人複数大学制度」(いわゆるアンブレラ方式)の導入を課題に挙げました。今回の検討会議はこれを受けたもので、中教審答申(11月末予定)後の年末に中間まとめ、年度末に最終まとめを行う予定です。

 既に名古屋大学・岐阜大学(20年度)、静岡大学・浜松医科大学(21年度)、小樽商科大学・帯広畜産大学・北見工業大学(22年度)、奈良教育大学・奈良女子大学(同)の4グループ間で、法人統合の検討が進んでいます。いずれも各大学のキャンパスは維持される見込みです。

 単なるリストラではなく、学生の教育の充実と、研究力強化のための法人統合になってほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/092/index.htm

※今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(中教審 将来構想部会)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1406578.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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