3歳未満児の教育・保育、もっと充実を!

 経済協力開発機構(OECD)は毎年、加盟国などの教育データを比較した「図表でみる教育:OECDインディケータ(指標)」をまとめています。最新の2018年版について日本の「カントリーノート(国別要旨)」では、幼児教育や保育サービスが依然として家計の負担に依存していることとともに、3歳未満児の教育・保育在籍率がOECD平均を下回っていることを指摘しています。
子育てしながら働く保護者のためはもとより、子ども自身が就学後に学力を伸ばすためにも、年齢にふさわしい教育と保育を手厚く行うことが今、求められています。

3歳以上児は高いのに

 OECDの統計方法に従えば、2015年の幼児教育在籍率は3歳児で84%と、OECD加盟国平均より8ポイントも高くなっています。4・5歳児になると、95%に達します。こうした日本の「就学前教育」の高さを、かねてからOECDは高く評価していました。
 OECDは同時に、日本が初等中等教育(小・中・高校など)に比べて、高等教育(大学など)とともに幼児教育には、国があまりお金を負担してこなかったことを問題視していました。国内総生産(GDP)に占める国の支出割合は0.2%にすぎず、OECD平均の3分の1にとどまっています。
 もっとも、統計の対象となった年度は幼児教育の無償化措置に取り組む前です。カントリーノートでも「仕事と家庭の両立を願う女性の後押しとなることも期待されている」と述べています。

ただ、3歳未満児に関しては、近年でも整備の遅れが問題になっています。「図表でみる教育」を見ても、2015年段階で幼児教育・保育サービスを受ける3歳未満児の割合は23%と、OECD平均を8ポイントも下回っています。もちろん、2005年の16%、10年の19%からすれば徐々に整備は進んでいるのですが、「日本の場合、育児環境の改善を図る政府の諸施策がわずかながら効果を示し始めているといったところ」(カントリーノート)であり、女性活躍を掲げる政府にしては、まだまだ取り組みが必要なようです。

量的整備だけでなく質の確保も重要

 新しい幼稚園教育要領は、今年度から全面実施になっています。保育所保育指針も、幼稚園教育要領に合わせて改定されました。さらに重要なのは、今回の教育要領・保育指針は、小学校以上の学校との接続を意識していることです。
 今回の学習指導要領等の改訂では、教科などはもとより、幼児教育から高校教育まで、共通して「資質・能力の三つの柱」(<1>知識・技能、<2>思考力・判断力・表現力等、<3>学びに向かう力・人間性等)を育成するよう整理しました。ただ、幼児教育は、発達段階を考慮して、<1>知識・技能の基礎、<2>思考力・判断力・表現力等の基礎、<3>学びに向かう力・人間性等——と、<1>と<2>には「基礎」を付ける一方、<3>は同じ文言です。どちらにしても、就学後の教育で十分に資質・能力を伸ばすためには、幼児教育が重要だと位置付けられているのです。

 幼児教育の無償化はもとより、待機児童問題の解消も重要です。ただし、量的な整備だけでなく、教育・保育の質の確保も忘れてはなりません。幼児教育は、人が一生学び続けるための重要な時期なのですから。

(筆者:渡辺敦司)

※図表でみる教育2018年版・日本
https://www.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance-2018/japan-japanese-version_kr6xh5-ja

※中央教育審議会・学習指導要領の改訂答申(2016年12月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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