学力調査から見える新指導要領への準備

小中学校にとって今年の夏休み明けは、例年と少し違います。4月の全国学力・学習状況調査の結果が1か月早く返却されたため、学校として夏休みの間に授業の改善方法を検討できたからです。今年度は、新しい学習指導要領の移行措置も始まりました(全面実施は小学校が2020年度から、中学校が21年度から)。質問紙調査の結果からは、新指導要領の先取り状況も垣間見えます。

「主体的・対話的で深い学び」、早くも効果

新指導要領の眼目は、何と言っても、人工知能(AI)の進化など激変する社会で「人生100年時代」を生きる子どもたちに、狭い学力だけにはとどまらない三つの柱で資質・能力(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力等<3>学びに向かう力・人間性等)を育むことです。そうした幅広い資質・能力を付けさせるための授業の手法が、「主体的・対話的で深い学び」と総称されています。

これに関連して、学校への質問紙調査で「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から(進んで)取り組むことができている」と回答した割合は、小学校で83.7%、中学校で81.2%に上りました。児童生徒に尋ねても、前年度までを振り返って「授業では、課題の解決に向けて、自分で考え、自分から進んで取り組んでいた」との回答が、小学6年生で76.8%、中学3年生で73.9%を占めています。

学校現場では、2014年11月に指導要領の改訂が中央教育審議会に諮問されて以来、主体的・対話的で深い学び(当時はアクティブ・ラーニング……「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と説明)への関心が急速に高まり、いち早く授業改善の試みが始まっていました。そうした努力の成果が、早くも児童生徒にも表れているようです。

現行の指導要領で伸び悩んでいた課題も

現行の指導要領でも、「習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫」が求められています。そうした改善・工夫をよく行ったと回答した学校の割合も、2016年度以降、小学校で90.1%→91.6%→93.0%、中学校で88.6%→89.8%→92.5%と年々増えています。

主体的・対話的で深い学びは、習得・活用・探究という学習を一体で進めるためにも有効です。児童生徒に聞くと、「話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすること」ができているとの回答が、小6で68.4%→68.3%→77.7%、中3で64.9%→64.8%→76.3%と、それまで伸び悩んでいた数値が今年度になって跳ね上がっています。こうした結果も、主体的・対話的で深い学びが定着してきた効果の表れと言えるでしょう。

ただ、教科に関するペーパーテストの結果を見ると、▽話し手の意図を捉えながら聞き、自分の考えをまとめたり、複数の資料の内容を関係付けて理解したり、表現したりすること(小学校国語)▽数学的な結果を事象に即して解釈することを通して、成り立つ事柄を判断し、その理由を数学的な表現を用いて説明すること(中学校数学)▽実験や条件制御などにおいて、自分や他者の考えを検討して改善すること(同理科)……などに課題があったといいます。
新指導要領の全面実施に向けて、各学校には一層の授業の工夫をしてほしいものですし、児童生徒も、変わる授業に受け身ではなく、主体的に取り組みたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※2018年度全国学力・学習状況調査の結果について
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/index.html

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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