子どもの貧困対策に何が必要?

夏休みも真っ盛りですが、学校給食がないため子どもに十分な栄養を取らせることができずに心を痛めている保護者も、少なからず存在します。子どもの貧困対策は、単に個々の家庭の問題にとどまらず、「貧困の連鎖」が格差を固定させ、結果として福祉等のコスト増大を招くなど、社会全体にとっても取り組むべき課題です。何より、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることがあってはなりません。
現状と課題を、7月に開催された内閣府の「子供の貧困対策に関する有識者会議」をもとに、探っていきましょう。

依然低い大学などへの進学率

景気の回復基調が続いている中、統計上の貧困状況は確かに改善しています。
厚生労働省が3年ごとに行っている国民生活基礎調査では、世帯の所得を低いものから高いものへと順に並べた時の中央値を半分にした額を「貧困線」と呼び、貧困線に満たない世帯員の割合を「相対的貧困率」としています。
2015年の貧困線は122万円で12年調査とほぼ同じでしたが、相対的貧困率は0.4ポイント減の15.7%、17歳以下の「子どもの貧困率」は2.4ポイント減の13.9%に改善しました。しかし、それでも子どもの7人に1人が相対的な貧困状況に置かれていること、とりわけ一人親世帯では3.8ポイントも減ったとはいえ50.8%と2人に1人を占めるなど、深刻な数値であることも否定できません。

家庭の経済状況は、進学できるかどうかにストレートに反映します。高校に関しては、生活保護世帯の進学率は2017年度で93.6%と、全世帯の99.0%に比べて低いものの、13年度の90.8%に比べて差が縮まっています。2014年度から始まった授業料無償化や奨学給付金などの施策が功を奏している格好です。一方、大学・短大・専修学校等への進学率は、全世帯の73.0%に比べ、生活保護世帯は35.3%と、依然低いままです。
バブル経済の崩壊後、高卒就職市場が急速に縮小して久しい中、上級学校に進学するなどして社会で活躍できるスキルを身に付けることは不可欠になりつつあります。2017年度から先行実施されている給付型奨学金制度の本格実施や、無利子奨学金の更なる拡充が期待されます。

届かない支援、学校を基盤に

委員の山野則子・大阪府立大学教授が、大阪府の委託を受けて小中学生とその保護者の約10万人を対象に実施した調査結果では、世帯の可処分所得(手取り収入)と世帯人数から「困窮度」をI~IIIに分けたところ、最も深刻な困窮度ⅠI、就学援助を受けていない世帯が14.6%、児童扶養手当を受けたことがない一人親世帯が10.1%ありました。制度が整っていても、必要な世帯に届いていなければ何にもなりません。

困窮世帯ほど学習理解度の割合が低く、授業時間以外の勉強を「まったくしない」と回答する割合が高い実態も浮き彫りになっています。子ども自身の進学希望も「中学・高校」が困窮度Ⅰで22.7%を占めています。
困窮世帯の子どもほど遅刻する割合が高いなど、普段の様子から子どもの課題に気付くこともできそうです。山野教授が提唱する通り、学校を「プラットフォーム」(基盤)として、スクールソーシャルワーカー(SSW)を交えて関係機関につなげるなどして、地域社会を挙げた貧困対策を促進してほしいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※第7回 子供の貧困対策に関する有識者会議(7月13日)配布資料
http://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/yuushikisya/k_7/gijishidai.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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