格差を乗り越える保護者の働き掛けは?

4月に行われた全国学力・学習状況調査の成績が、各学校に返却されています。例年より1か月早められ、夏休みのうちに授業改善を検討してもらいたい考えです。ところで、過去の調査の分析からは、注目すべきことがわかっています。家庭の経済格差などが子どもの学力に深刻な影響を与えているとともに、そうした格差を乗り越えて子どもの学力を上げる秘訣(ひけつ)も、浮かび上がってきているのです。

励ましで伸ばす「非認知スキル」

過去の追加分析調査では、家庭の世帯年収や保護者の学歴が高いほど子どもの学力も高くなることが、データで裏付けられました。一方、保護者の所得や学歴で不利な環境に置かれた子どもを多く抱える地域にあっても、予測される以上の成績を上げている学校が存在することが、同時にわかっています。

今回、以前と同じお茶の水女子大学の研究グループが、昨年行われた2017年度調査の分析を行いました。2017年度は、13年度に続き2回目の保護者調査が行われた年です。その結果、学力面では不利な環境にあるはずの家庭にも、高学力の子どもが一定数存在することが明らかになりました。カギを握るのが、「非認知スキル」です。
非認知スキルとは、自制心や意欲、忍耐力などを指します。今回の分析では、「ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがある」「自分には、よいところがあると思う」「友達と話し合うとき、友達の考えを受け止めて、自分の考えを持つことができる」など8項目を合成して、測定指標を作りました。すると、子どもの非認知スキルが高ければ、どんな家庭に属していても学力を押し上げる可能性があること、非認知スキルを上げるには、学歴や所得に関係なく、保護者の働き掛け方が重要であることがわかりました。

具体的には、▽よいところを褒めるなどして自信を持たせるようにしている▽努力することの大切さを伝えている▽最後までやり抜くことの大切さを伝えている▽毎日、朝食を食べさせている(中学生)▽地域社会などでのボランティア活動等に参加するよう促している(中学生)……といった働き掛けで、とりわけ小学生で強い影響があったといいます。

「学校風土」と相まって学力向上を

そうした不利な環境を克服している家庭の子どもは、授業の復習をする傾向が強く、塾に頼らなくても学習時間が長くなるため、学力が伸びるといいます。
非認知スキルは、既に小中学校で移行措置に入っている新しい学習指導要領でも、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」に次ぐ資質・能力の三つ目の柱に「学びに向かう力・人間性等」として位置付けられているものです。狭い意味での学力だけでなく、非認知スキルを含めた幅広い資質・能力をバランスよく育成することが、学力向上のためにも有効なのです。

今回の分析では、想定される以上の成績を上げている学校の特徴として、保護者への働き掛けとともに、児童生徒が▽熱意をもって勉強している▽授業中の私語が少なく、落ち着いている▽話し合いなどの活動で、自分の考えを相手にしっかりと伝えることができている……などの「学校風土」があることもわかりました。
学校と保護者、地域が一体となって子どもの幅広い資質・能力を育み、それが結果として学力を向上させ、格差克服にもつながるような取り組みを、ぜひ広げたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※全国的な学力調査(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/

※お茶の水女子大学の調査分析(2017年度文科省委託研究)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/130/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/06/27/1405482_9_2.pdf

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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