避けられない?本格的な大学改革
中央教育審議会の部会は、今年生まれた子どもが大学を卒業する2040年を見据えた「高等教育の将来像」の答申を目指し、現段階で固まった方向性について、6月末に中間まとめを行いました。
大学などの主な入学年齢である18歳人口は、再び急減期に入る「2018年問題」を超えて、40年には4分の3に縮小すると見られます。財政当局はもとより経済界からも大学を再編・統合すべきだとの提言が相次いでおり、政府も高等教育無償化をはじめとした諸施策とセットで、大学改革を求めています。個別大学にとどまらず、都道府県や地域社会にとっても、高等教育の在り方を主体的に考えることが避けられない情勢になっています。
2040年、18歳人口は4分の3に
大学などの主な入学年齢である18歳人口は、2018年度の約118万人から、40年には約88万人と、約30万人減ります。現在でも約600校ある私立大学のうち4割が定員割れとなっていますから、学校経営に与える影響も深刻です。
第2次ベビーブーム世代のピークだった1992年(約205万人)以降、大学数が逆に増え続けたように、進学率が上がれば大学も維持できそうなものですが、2017年度でも大学進学率(浪人を含む、以下同じ)は52.6%、短大を含めると57.3%に上っています。専門学校などを合わせれば、高等教育全体の進学率は80.6%に達しており、今後数%伸びたにしても、結局は高等教育の学校内でパイを奪い合わなければならないことは必至です。
2017年3月に当時の松野博一文部科学相から諮問を受けた中教審は、大学分科会の下に「将来構想部会」を設けて、約1年にわたって審議を重ね、今回の中間まとめに至りました。秋ごろの答申を目指して、さらに議論を続けることにしています。
一つの大学で学ぶとは限らない?
現段階で示された大学改革の方向性とは、どういうものでしょうか。
まず、大学の役割・機能を(1)世界をけん引する人材を養成(2)高度な教養と専門性を備えた先導的な人材を養成(3)具体の職業やスキルを意識した高い実務能力を備えた人材を養成……の3タイプに分け、各大学に明確化を迫ります。そのうえで、学内で学部を超えた柔軟な教育機能の充実を図ることや、国立大学法人も含めて経営力の強化を図ることはもとより、国公私を問わず大学の「連携・統合」を促します。
連携・統合には、幾つかのステップがあります。まず、地域の高等教育機関と、地方自治体・産業界で「地域連携プラットフォーム」を形成し、地域ごとに高等教育の在り方を話し合ってもらいます。これをもとに、一般社団法人の「大学等連携推進法人(仮称)」を設置して、教養教育や教職課程なども共同で運営できるようにします。
こうした連携を強めるなかで、具体的な法人統合や、定員の融通という話が自然と起こってくることを期待しています。国立大学に関しては、一つの国立大学法人が複数の大学を設置できる「アンブレラ方式」を制度化したい考えで、既に名古屋大学と岐阜大学(東海国立大学機構=仮称)など、各地で法人統合の検討が持ち上がっています。また、私立大学の間でも、丸ごとの統合だけでなく、学部単位での事業譲渡もできるようにします。
一つの大学に入学し、学内だけで授業を受け、その大学を卒業する……そんな当然と思われている姿も、将来はまったく違った形になっているかもしれません。
(筆者:渡辺敦司)
※中教審 将来構想部会 中間まとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/index.htm