入試科目にもなる情報は「学習の基盤」
大学入試センター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」について、今の小学6年生が受験する2024年度(25年1月実施)から、新科目の「情報I」を出題することが、政府の方針として確認されました。
なぜ今、入試科目として出題するほど情報を学ぶ重要性が叫ばれているのでしょうか。
もはや「読み書きそろばん」と同列
方針を確認したのは5月17日、国の成長戦略の司令塔である「未来投資会議」の第16回会合でした。それまでの議論を受けて、林芳正文部科学相が、高校の新学習指導要領(2022年度入学生から全面実施)で必修化される情報Iを共通テストの科目として各大学の判断で活用できるよう検討することを表明。
これに対して、同会議の議長である安倍晋三首相は、IT(情報技術)や情報処理の素養は「もはやこれからの時代の読み書きそろばん」だと強調したうえで、大学入試でも国語や数学、英語のような「基礎的な科目」として追加するよう検討することを、林文科相に指示しました。
ところで情報科目の出題自体は、目新しいことではありません。現在のセンター試験でも「情報関係基礎」が出題されています。ただし、これはあくまで工業や商業など専門学科で学ぶ情報関係の基礎科目が出題範囲です。普通科も含めた選択必履修科目である「社会と情報」「情報の科学」は、出題されてきませんでした。
一方、大学入学者選抜改革などを検討していた文部科学省の「高大接続システム改革会議」は既に2016年3月、新指導要領になった時に情報科目を新テストで出題するよう提言していました。今回の未来投資会議は、これを政府方針として格上げさせた格好です。
小学校から強化、高校でも全員共通に
入試科目に限らず、情報の学習は、新指導要領でいっそう重視されています。
指導要領の全体方針を定める「総則」では、小中高を通して、情報モラルを含めた「情報活用能力」を、言語能力や、問題発見・解決能力などと並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けました。小学校(2020年度から全面実施)でプログラミング教育が必修化されたのも、その一環です。
高校では、教科「情報」が2003年度入学生から全生徒に必修化されていますが、現在は、情報の特徴と情報化が社会に及ぼす影響を理解させる「社会と情報」か、情報技術の役割や影響を理解させる「情報の科学」(いずれも標準単位数2単位)の、どちらかを選ぶことになっています。
しかし、教科書の採択冊数でも「社会と情報」が8割を占めており、全員が情報を科学的に理解できているとは限りません。そこで新指導要領では、この2科目を「情報I」(同2単位)として統合。効果的なコミュニケーションの実現はもとより、コンピューターやデータの活用について、すべての生徒に学ばせることにしました。
共通テストの科目として加わっても、実際に入試で課されるかどうかは、各大学の判断に任されています。ただ、政府全体の方針ともなると、現在は国立大学協会が5教科7科目の出題を申し合わせている中に、6教科目として情報が入る可能性も出てきます。
入試に出るかどうかは別としても、これからの人工知能(AI)時代を生きる子どもたちにとって、情報活用能力は、社会に出てから不可欠な資質・能力です。学校はもとより、社会や家庭が一体となって育成していきたいものです。
(筆者:渡辺敦司)
※未来投資会議
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/
※新高校指導要領
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304427_002.pdf
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。