大学が3タイプに分かれる?

「大学全入時代」と言われて久しくなっていますが、今年に入る前、大学関係者の間では「2018年問題」という言葉が危機感を持って語られていました。主な入学対象年齢である18歳の人口が、再び減少期に入るからです。そうしたなかで文部科学省は、各大学を大きく3タイプに明確化するよう提案しています。背景には何があるのでしょうか。

林文科相が審議状況を報告

18歳人口はここ数年、120万人前後で推移してきましたが、2018年度に約118万人となるのを皮切りに年々減っていき、30年には100万人ほど、40年ごろには現在の3分の2に当たる約80万人にまで落ち込むと推計されています。

そこで2017年3月、当時の松野博一文部科学相は、40年ごろの社会を見据え、大学を含む高等教育機関の「将来構想」を検討するよう、中央教育審議会に諮問しました。
中教審では6月ごろに中間まとめを行ったうえで、秋にも答申を行う方向で検討を進めています。
そうした中教審での審議状況について、林芳正文科相は、5月16日に開催された政府の「人生100年時代構想会議」第7回会合で報告しました。そこでは現在、約780校ある大学にどのような役割や機能があるかが社会からわかりづらいなどとして、大学の強みや特色を(1)世界を牽引する人材を養成(2)高度な教養と専門性を備えた先導的な人材を養成(3)具体の職業やスキルを意識した高い実務能力を備えた人材を養成……という3タイプに明確化する方向で議論を行っていると説明しています。
(1)は博士課程までを含めた研究大学、(2)は修士課程を含めて高度な人材を養成する大学、(3)は就職を前提とした学部中心の教育を行う大学をイメージしています。
ただ、これらは当時、あくまで審議会事務局を務める文科省の案でした。中教審の論議では委員から異論も根強く、このままの形で答申となるとは限りません。しかし、既に進学率が50%を超えた大学を、何らかの形で「機能別分化」させようという文科省の意思は固いようです。

国立は既に「分化」

実はこの機能別分化は、10年以上も前から提言されていたものでした。
2005年1月の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」は、大学の機能について、(1)世界的研究・教育拠点(2)高度専門職業人養成(3)幅広い職業人養成(4)総合的教養教育(5)特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究(6)地域の生涯学習機会の拠点(7)社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)……の七つを示し、これらの中から各大学が幾つかを選択する格好で、ゆるやかに機能分化させることを提言しました。

その後、各大学では特色を打ち出す動きが加速したものの、「機能」として明確化することには及び腰でした。それに業を煮やした文科省は、まず国立大学に対して2016年度以降、(1)地域のニーズに応える人材育成・研究(55大学)(2)分野ごとの優れた教育研究拠点やネットワークの形成(15大学)(3)世界トップ大学と伍(ご)して卓越した教育研究(16大学)……の選択を迫りました。
今後は私立も含め、各大学は、大学としての機能を明確に打ち出すことが、ますます求められそうです。高校生の進路選択にとっても、無視できない要素となることでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 将来構想部会(第9期~)第1回 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/1386346.htm

※第7回人生100年時代構想会議 林文部科学大臣提出資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai7/siryou3.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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