<変わる授業>どのような勉強をすればいい?

3月末、高校の新しい学習指導要領が改訂されました。実施されるのは2022年度の入学生(今年度の小学6年生)からです。
一方、高校1年生が大学を受験する2021年1月から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」は、新指導要領の趣旨を先取りするという位置付けもあります。今後の大学進学に向けて、どのような勉強をすればよいのでしょうか。

学習・授業改善への「メッセージ」込められた問題

昨年11月に実施された共通テストの試行調査(プレテスト)問題について、3月に開かれた文部科学省・中教育審議会の各種会合では「生徒にかなり強いメッセージを与えているのではないか」「メッセージ性が高く、高校の先生方がみな自分事として授業に落とし込んでいる」などと評価する意見が相次いで出されました。
実際、大学入試センターが昨年9月に開催したシンポジウムでは、前職の文部科学省で指導要領の改訂に携わった大杉住子審議役が、入試で出題される問題には、大学の教育理念や大学入学時点で求める力はどのようなものかを、受験生や高校などの関係者に示す「メッセージ」だと説明していました。

もっとも今回の試行調査では、データ収集のため、あえて思い切った問題を出題したといいます。実際、正答率がずいぶん低かったため、今年11月の試行調査では、平均正答率が5割程度になるよう難易度を調整したい考えです。
それだけに今回の出題は、共通テストで問いたい学力は何かというメッセージが、ストレートに表れていると見ることができます。

資料を読み取り、考える活動が不可欠

たとえば国語の記述式では、生徒会規約と、それに基づいて部活動委員会の議題を話し合う生徒の会話文、生徒にアンケートを取った高校新聞などの資料を示し、考えて答える問題が出されました。また数学では、高校の生徒会が文化祭でTシャツを販売して利益をボランティア団体に寄付するという場面を設定して、Tシャツの売上額を予測する二次関数を導き出して答えさせています。他の教科でも、資料やグラフから必要な情報を読み取って解答する問題を多用しています。

こうした問題は、小学6年生と中学3年生を対象に毎年実施している「全国学力・学習状況調査」(以下、全国学力調査)のB問題に、とてもよく似ています。知識だけでなく思考力・判断力・表現力を問う共通テストは、全国学力調査、あるいは代表的な国際学力調査PISA(生徒の学習到達度調査)の大学入試版を目指したとも言えるからです。

さらに新指導要領は、教科横断的に三つの柱(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力等<3>学びに向かう力・人間性等)で資質・能力を育成することを目指し、児童生徒の学習プロセスも意識して、各教科で学習内容を整理しています。授業に「主体的・対話的で深い学び」の導入を求めているのも、そうした資質・能力を育てる活動を豊富に実施するような授業改善を進めてもらうためです。
今回の試行調査には、実際の授業での学習プロセスを想定したような出題がうかがえます。今後ますます変わっていく授業に真剣に取り組むことこそが、そのまま入試対策にもなるのです。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入試センター 試行調査(2017年11月実施分)の結果報告について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-01.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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