奨学金は卒業後の返還も考えて理解を。

新学期を迎え、お子さんも新たな気持ちで勉強をはじめとした学校生活に臨もうとしていることでしょう。大学進学を考えている生徒なら、なおさらです。
ただ、保護者にとっては高騰する学費や下宿代などの確保が悩みどころでしょう。そんななか、もはや奨学金は多くの学生にとって不可欠な存在になっています。しかし日本学生支援機構(JASSO、旧日本育英会)の奨学金制度は、複雑でわかりにくいものです。どうすれば奨学金を正しく理解し、上手に利用できるのでしょうか。

高校の先生向けハンドブックが参考に

生徒や保護者にとって奨学金制度がわかりにくいのは、仕方ないことかもしれません。実は高校の先生などにも、わかりにくいという声が根強いのです。
そこでJASSOは先頃、「先生!お金のことが心配です・・・」と題したハンドブックを作成しました。高校の先生向けですが、イラストを多用してわかりやすく説明しているため、保護者や生徒にとっても参考になりそうです。
そこでは、一人暮らしで私立大学に通う場合には年間で約240万円掛かること、そのうち家庭からの給付が3分の2(平均で約166万円)であることを示しながら、不足分を補うには▽学生本人がもらうor借りる「奨学金」▽保護者が借りる「教育ローン」▽学校が請求しないor減額する「授業料減免制度」……といったサポートがあることを示しています。
また奨学金も、国(JASSO)だけでなく、大学・専修学校などの学校(1,363校)、地方自治体(829団体)、公益財団法人など(549団体)も実施していることを紹介。奨学金は「自己投資」だとして、将来の返還に備えたシミュレーションも十分に行うことを促しています。

高騰する学費などに備えて

保護者の世代に比べて、大学への納付金は高騰しています。2016年度の入学料・授業料の合計は、私立大学で平均113万円余り、国立でも82万円近く。いずれも25年前(1991年度)に比べて20万円以上も高くなっています。国立でさえ、絶対的に「学費が安い」とは言えません。
JASSOの調査でも、何らかの奨学金を利用する大学生が2人に1人を超えていることが明らかになっています。JASSOの奨学金を利用しているのは、高専や専修学校も含めて学生の38%を占めています。

たとえば私立大学の自宅外生が月6万4,000円の無利子(第1種)奨学金を借りた場合、4年間で307万円余りにもなります。有利子(第2種)の場合には、利息も上乗せされます。幾ら借りて、どう返すのかのシミュレーションも欠かせません。
JASSOの奨学金には、定額返還方式だけでなく、2017年度からは年収に応じて返還月額が決まる「所得連動返還方式」も選べるようになっています。返還が難しい場合には、引き続き減額返還制度や返還期限猶予制度もあります。
ハンドブックをもとに、高校の先生にもしっかり勉強してもらい、将来のライフプランも含め、じっくりと相談したいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※高校教員向け「進学マネー・ハンドブック」
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/oyakudachi/money_handbook.html

※JASSO 2014年度学生生活調査
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2014.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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