国立大学の「連携・統合」方針は?

中央教育審議会は、18歳人口減が進んだ2040年ごろの社会を見据えて、大学など高等教育の「将来構想」を打ち出すことを検討しています。その中で、現在約780ある国公私立大学の「連携・統合」を提言したい考えです。
国立大学も例外ではありません。戦後、全都道府県に少なくとも1大学は整備され、地方での有力な進学先にもなっている国立大学は今後、どうなるのでしょうか。

各県のキャンパスは維持、法人は統合も

全国立大学を会員とする国立大学協会(国大協)は、1月に「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」を公表しました。検討の中心になったワーキンググループの座長は、中教審大学分科会で将来構想部会の部会長も務める永田恭介・筑波大学長です。最終まとめは、中教審の議論にも大きな影響を与えるものと見られます。

そこでは、人材養成(教育)をめぐる国立大学の目的や、少なくとも1県に1大学を設置するという原則は変えず、複数の大学を統合するという方策も採らないものの、「全都道府県に独立性・自律性を持った国立大学(キャンパス)を維持しつつも、複数の地域にまたがって、より広域的な視野から戦略的に国立大学(キャンパス)間の資源配分、役割分担等を調整・決定する経営体を導入することを検討する)としています。

現在の国立大学は、独立行政法人化に伴う国立大学法人制度の下、1法人が1国立大学を運営する仕組みになっています。国(文部科学省)直轄の時より運営の自由度は増しましたが、財政面でも国からの運営費交付金だけでなく自主財源の確保にも努めなければならなくなっています。18歳だけでなく地方の人口も減少するなか、生き残りを懸けた法人運営が求められます。

ところで中教審の将来構想部会では、「一法人一大学となっている国立大学の在り方」も検討するとしています。これと併せて考えれば、従来の各国立大学は「キャンパス」として残しながらも、法人統合によって1法人が複数の国立大学を運営する「アンブレラ方式」が、いよいよ現実のものとなってきているということです。

再編は教育学部から?

そうした大学間の連携・統合に道をつけそうなのが、教員養成学部(教育学部)です。 国大協の最終まとめでは、国立大学での教員養成は、理工系人材育成や医師養成などと同様に中心的な役割を担ってきたと強調しながらも、「広域エリア内での国公私を越えた連携・統合も含めて検討を行い、機能の強化・充実、教職大学院の拠点としての役割・機能の明確化を図る」と一歩踏み込んでいます。

これは、文科省の有識者会議がまとめた報告書(2017年8月)の提言内容を踏まえたものと見られます。現在、国立44大学に教員養成課程が設けられ、小・中学校などの全教科の免許が取れるようになっていますが、今後は教科などによっては近隣の大学と役割分担し、各県の大学は教職大学院に重点化したい考えです。教科によっては、隣県の大学まで行って単位を取らなければ免許が取得できなくなるかもしれません。

教員養成だけではありません。最終まとめでは、現状の分野や教員構成にとらわれない「大胆な再編」を含めて対応するとしています。2016年度以降、大掛かりな学部改組が各大学で行われましたが、今後は一大学にとどまらない学部・学科の大幅再編は必至です。

(筆者:渡辺敦司)

※国大協 「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」の公表について
http://www.janu.jp/news/teigen/20180126-wnew-future-vision-filnal.html

※http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/01/26/1400706_01.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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