学校のICT環境、これで大丈夫?

今や仕事でも社会生活でも、ICT(情報通信技術)機器は欠かせません。ましてや人工知能(AI)が人間の能力を上回りかねない時代にあっては、AIに使われるのではなく、AIを使いこなせる力を、子どもたちに身に付けさせる必要があります。
2020年度から全面実施となる小学校の新学習指導要領では、プログラミング教育も始まります。学校でも十分な情報教育を行ってほしいものですが、現状はまだまだ不十分なようです。

自治体により大きな差

政府の第2期教育振興基本計画(2013~17年度)では、授業で使いたい時にいつでも機器を使えるように、▽教育用コンピューターを児童生徒3.6人に1台(コンピューター教室に40台、各普通教室に1台、特別教室に6台、可動式40台を想定)▽電子黒板・実物投影機を各学級に1台▽超高速インターネット接続率・無線LAN整備率100%▽校務用コンピューターを各教員に1台……という整備目標を掲げました。そのための必要額として、2014~17年度の4年間で計6,712億円の地方交付税も措置しています。
しかし、文部科学省の2016年度調査(17年3月1日現在)の結果を見ると、▽教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数5.9人(前年度比0.3人減)▽普通教室の電子黒板整備率24.4%(同2.5ポイント増)▽100Mbps以上の超高速ネット接続率47.9%(同9.5ポイント増)、普通教室の無線LAN整備率29.6%(同3.5ポイント増)……と、依然として不十分な実態が明らかになっています。進んでいるのは、教員の校務用コンピューター整備率(同1.9ポイント増の118.0%)だけです。
しかも、これらの数値はあくまで全国平均です。都道府県や市区町村によって大きな差がある点も、依然として改善されていません。たとえば都道府県別に見た教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は、最も整備が進んでいる佐賀県で1.9人なのに対して、最も遅れている神奈川県では8.0人です。その佐賀県にしても、市町村別では0.8人から13.9人までの格差があります。全国で見ると、0.2人から17.5人までさまざまです。

学習格差にもつながる恐れ

こうした状況に文科省は、都道府県教育委員会などに宛てた通知の中で「児童生徒の学習環境の格差につながる恐れがあります」と強い危機感を示しながら、計画的な整備を求めています。
現行の整備目標も達成には遠い状況ですが、それにとどまってもいられません。
文科省は、新指導要領の実施を見据えて、2018年度以降の整備方針をまとめています。そこでは、児童生徒用コンピューターは「最終的には『1人1台専用』が望ましい」としながらも、当面は各クラスで1日1コマ分程度は活用できるよう、3クラスに1クラス分程度の配置(必要な時に1人1台環境)を求めています。
地方交付税は使い道が限定されていないため、自治体で予算化しなければ、いつまでたっても整備は遅れたままです。折しも各自治体で来年度予算を審議する議会が行われる時期です。住んでいる自治体によって子どもの学習環境に格差が生じ、それが学力格差につながるとすれば、保護者としても決して無関心ではいられません。
文科省の調査には、自治体別の詳しい結果も出ています。お住まいの自治体や学校の実態をチェックしてみてはいかがでしょうか。

(筆者:渡辺敦司)

※学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(平成28年度)〔速報値〕及び平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について(通知)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1399902.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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