成長に応じた読書、家庭でも後押しを!

子どもにとって読書は、それ自体が楽しいことはもとより、よりよい人生を送るための感性や創造性も広げてくれます。さらに、大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に代われば、どの科目でも多くの資料を読みこなし、国語と数学では記述式問題にも答えなければなりませんから、読解の<基礎体力>を付けてくれる効果も期待できます。
文部科学省の有識者会議が12月の会議で固めた「論点まとめ(案)」から、読書の意義を考えてみましょう。

ICTの利用で情報の吟味がおろそかに?

読書をめぐっては、2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、これに基づいて国は「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定することになっています。現在の第3次計画は2017年度で終了するため、有識者会議は次期計画に向け、まずはどのような成果や課題があるかを検討してきました。
論点まとめ案では、生産年齢人口の減少やグローバル化の進展、技術革新により、社会や雇用の環境が大きく変化していく時代にあって、子どもたちが将来、変化に向き合い、他者と協働して課題を解決していくような力が求められるとしています。その一方で、ICT(情報通信技術)の利用が増えることで、視覚的な情報と言葉の結び付きが希薄になり、情報の意味を吟味したり、文章を的確に捉えて読み解いたりすることが少なくなっているのではないかと、危機感を示しています。
そんな状況にあって読書活動は、自己の考えを形成し表現する力や、情報を適切に収集・選択・活用する技能を育成してくれますし、学習指導要領の改訂や、大学入学者選抜改革を含む「高大接続改革」にも、大いに役立つものです。
しかし、1か月間に一冊も本を読まなかった子どもの割合は、小学生で5.6%、中学生で15.0%あり、高校生では50.4%に跳ね上がります。とりわけ高校生は、読書をする子としない子の二極分化が課題になっています。

本で親子の話し合いを

論点まとめ案では、子どもが読書を好きになり、自主的に読書をするようになるためには、幼児期から発達段階に応じた取り組みが必要だとしています。
各段階の特徴は、(1)保育所・幼稚園等の時期は、大人に読んでもらうことを通じて絵本や物語に興味を示すようになる (2)小学生の時期は、低学年に一人で本を読もうとするようになり、中学年になると最後まで読み通せる子どもは自分の考え方と比較して読むことができるようになり、高学年では好みの傾向が現れるとともに読書の幅が広がり始める (3)中学生の時期は、多読の傾向が減少し、共感したり感動したりできる本を選んで読むようになる (4)高校生の時期は、目的や資料の種類に応じて適切に読める水準に達し、知的興味に応じていっそう幅広く多様な読書ができるようになる……というものです。
そうした子どもの状況を的確に把握して読書を促すには、家庭の役割も重要です。論点まとめでは、「読書は、1冊の本を媒体にして親子が話し合う時間を持ち、絆(きずな)を深める手段として重要」だと指摘し、学校や図書館とも連携して取り組むよう促しています。
保護者が読書を楽しんでいる姿を小さい時から見ていれば、きっと子どもも本好きになることでしょう。勉強しろ、本を読めと尻をたたくのではなく、まずは大人の姿勢が重要なのかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※子供の読書活動推進に関する有識者会議(第5回)配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/040/shiryo/1399490.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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