共通テスト試行調査(プレテスト)の問題は「メッセージ」

大学入試センター試験まで、あと1か月を切りました。大学志望者の多くは、テスト勉強の追い込みに取り掛かっていることでしょう。
ところで現在の中学3年生から、大学入学者選抜の制度が大きく変わります。2021年1月からセンター試験が「大学入学共通テスト」に切り替わり、それに伴って各大学の個別試験や選抜方法も、大幅な変更が予想されるからです。新しい入学者選抜体制に、どのような姿勢で臨めばよいのでしょうか。

試行調査(プレテスト)、「B問題」に似て当然

共通テストでどのような力が問われるのかを推測するうえで参考となりそうなのが、11月に全国の高校の約4割を対象に行われた試行調査(プレテスト)です。出題された問題は、結果の速報値とともに入試センターのホームページ(HP)に公開されています。
とりわけ目玉である国語と数学の記述式問題は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題(主に活用)のような印象を受けるかもしれません。まさに共通テストは、学テB問題やPISA(経済協力開発機構<OECD>の「生徒の学習到達度調査」)の大学入学者選抜版を作ろうと構想されたものでした。
A問題で問われるような「知識・技能」は、高校の授業でしっかり習得しておいてもらおう。共通テストでは、その授業で培ってきたはずの、知識を活用した「思考力・判断力・表現力」を中心に評価して、各大学では、多様な試験方法や選抜資料によって、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を含めた幅広い学力を評価して入学者を選抜し、さらに大学教育で伸ばして、社会に優秀な人材を送り出そう……というのが、「高大接続改革」の本義です。
ただ記述式は、マークシート式の問題と違って、どう採点されるのか不安を持つ向きも少なくありません。入試センターでは、そんな不安に応えようと、自己採点用の参考動画とワークシートをHPにアップしています。

高校の授業改善を促す

ところで、公開された問題を見る際に注意したいのは、あくまでも「試行」としての「調査」問題であるということです。これもHPにアップされていますが、実施前に各高校向けに趣旨を説明した資料でも、わざわざ「必ずしもそのまま大学入学共通テストに受け継がれるものではない」と断っているぐらいです。
試行調査(プレテスト)は2018年度にも、大学を会場として実施される予定ですが、その問題も「調査」のためのものですから、それで「入試対策」をしようなどと考えてはいけないようです。
では、問題を見る必要がないのかというと、決してそんなことはありません。
9月に行われた入試センター主催のシンポジウムで、前職の文部科学省で学習指導要領の改訂に携わった大杉住子・入試センター審議役は、入試で出題される問題には、受験生や高校などの関係者に対して、大学の教育理念や大学入学時点で求める力はどのようなものかを示す「メッセージ」だと説明しました。新指導要領を先取りするとも言われる試行調査(プレテスト)の問題には、そうしたメッセージが鮮明に現れていると言えます。
高校の先生方には、そうしたメッセージをきちんと受け止め、授業に生かしてもらう必要があります。それに伴って生徒も、幅広い学力を身に付けるような努力が、いっそう求められるのです。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入学共通テストやシンポジウムの関連資料
http://www.dnc.ac.jp/news_all/index.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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