英語試験 具体的にはいつから、何が変わるの?
2021(平成33)年1月から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」では、英語に関して、GTECや英検など資格・検定試験を活用することになりました。ただ、当面は従来のセンター試験と同じく、マークシート式の問題も出題されるといいます。
結局、具体的にはいつから、何が変わるのでしょうか。
あくまで原則は4技能を<資格・検定試験で>
まず確認しておきたいことは、共通テストでは当初から、資格・検定試験を活用して「聞く・読む・話す・書く」の英語4技能評価を行うのが原則だということです。
現行の学習指導要領でも、中高を通じて、4技能をバランスよく育成することを目指しています。しかし実際には、大学入試や高校入試の英語もペーパーテストで行われることがほとんどなので、どうしてもリーディング(読む)に短文のライティング(書く)が課される程度で、センター試験のリスニング(聞く)も配点は高くなく、スピーキング(話す)に至ってはセンター試験や公立高校入試では直接的にはかられていません。これでは、4技能を総合的に活用できるかどうか、ましてや、英語を使ってコミュニケーションができるかどうかを判定することはできません。
今でも高校では、卒業時点で「英検準2級程度~2級程度以上」の英語力を達成した生徒の割合を50%にすることが第2期教育振興基本計画に掲げられ、政府の目標となっています。これは、国際標準であるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に換算すると、A2レベル(個人的な話題のやりとりができる「基礎段階の言語使用者」)~B1レベル(身近な話題なら理解できる「自立した言語使用者」)に当たります。英語で授業を行うことが基本の高校学習指導要領に沿っていれば、達成できるはずの数値目標です。
しかし文部科学省が2015(平成27)年度に高校生(国公立)の英語力を調査したところ、A2レベルに達していない高校3年生の割合は、リスニングで73.6%、リーディングで68.0%、スピーキングで89.0%、ライティングで82.1%を占めており、17(同29)年度の計画期間中の達成は絶望的です。とりわけスピーキングやライティングの力が低いのは、リーディングやリスニング中心の入試が影響して、英語を話したり英文を書いたりする訓練がおろそかになっているためだと見られます。
近年は大学でも、グローバル人材の育成に力を入れるため、英語を積極的に使って教育を行おうとしています。しかし、肝心の受験生が基礎段階さえ十分でない程度の英語力では、入学後の大学教育が十分な効果を上げることもできません。だからこそ、4技能評価を<原則>にしたのです。
2023年度まではマーク式も出題するけれど…
ただ、共通テストが導入される2020(平成32)年度から、いきなり資格・検定試験に移行するのは、対応に追われる高校はもとより、入学者選抜を行う大学側にも、慎重論や抵抗感が根強くありました。
そこで、7月に策定された共通テストの実施方針では、「制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮」して、2023(平成35)年度の共通テスト(現在の小学6年生が受験)まではセンター試験と同様、マークシート式の問題(リスニングとリーディングの2技能)の出題を続けることにしました。志願者に何を課すかは各大学の判断になり、共通テストと民間の資格・検定試験のいずれか、または双方を選択し活用することになります。
新しい学習指導要領の下で学ぶ高校生(現在の小5)が受ける2024(平成36)年度の共通テストからは、英語のマークシート式は出題されなくなり、資格・検定試験に一本化されます。4技能をバランスよく身に付けることが、新たな大学入学者選抜を受けるにあたって重要になるでしょう。
最近では大学でも学生にTOEFLやTOEICなど留学・ビジネス用の資格・検定試験の受検を課すところが増えています。入学後に困るのは、受験生自身なのです。
(筆者:渡辺敦司)
2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。