既に始まる大学入試の英語「資格・検定試験」活用

現在の中学3年生以降が受験する大学入学者選抜の改革をめぐっては、大学入試センター試験を改めた「大学入学共通テスト」で、英語に実用英語技能検定(英検)やGTECなど民間の資格・検定試験を活用して「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能評価を導入することが注目されています。ただ、4技能評価は既に個別入試では始まっており、今後ますます広がっていきそうです。

出願資格や得点換算に

文部科学省のまとめによると、2015(平成27)年度入試で、英語の資格・検定を活用している大学は36.3%と、既に3校に1校以上を占めています。設置者別では、国立28.0%、公立22.6%、私立39.5%。入試形態別に見ると、一般入試は5.9%とまだ少ないものの、推薦入試では27.6%、AO入試では19.3%でした。
その後も有力大学で、活用が相次いでいます。立教大学は、2016(平成28)年度入試から全学部の一般入試に「グローバル方式」を導入しました。GTECなど指定する6種類の資格・検定について、国際的な基準であるCEFR(セファール)(ヨーロッパ言語共通参照枠)の6段階のうち、B1レベル以上に相当するスコアを、出願資格として求めています。B1とは「自立した言語使用者」に何とか達している人のことで、標準的な話し方であれば身近な話題の主要点を理解でき、筋の通った簡単な文章を作ることができる程度を指します。これに達していれば、英語以外に学部が指定する2教科で受験できる仕組みです。2018(平成30)年度入試からは、一部の学部で出願資格をB2に引き上げる他、大学入試センター試験利用入試にも「英語外部試験利用制度」を導入し、センター試験の英語得点と、英語資格・検定試験のスコアを換算した1点単位の換算得点と、いずれか高いほうの得点が合否判定に利用される方式を新設します。
関西学院大学も、2016(平成28)年度のセンター試験利用入試から、「英語検定試験活用型」を導入しています。指定9種類のいずれかでB2以上のスコアがあれば、センター試験の英語が不要となります。

入学後にはより高いレベルを要求

国立大学も負けてはいません。
鹿児島大学は2017(平成29)年度から、推薦入試ⅠⅠ(センター試験を課す)と一般入試で、8種類の資格・検定で過去3年間にB2以上のスコアを取得した受験生に、センター試験の英語の得点を満点とみなす優遇制度を設けます(ただしセンター試験の英語の受験は必要)。
筑波大学は、まず2017(平成29)年度の医学類の推薦入試からC1(学問上や職業上の目的で言葉を使用できるなど、熟練した言語使用者レベル)以上のスコアを総合評価に反映する方式を始め、18(同30)年度には全学類の推薦入試に拡大(医学類以外はB1以上)。2020(平成32)年度からは、一般入試にも導入します。
こうした大学では、入学後にも、より高いレベルのスコア取得を必須化したり、奨励したりしているところが少なくありません。入学時に一定程度の4技能が身に付いていれば、それを前提に、入学後の教育を行うことができます。大学の卒業生に、英語を使って仕事ができるようになることが求められるなか、グローバル化への対応に力を入れる大学ほど、入学者選抜でも高い4技能を求める傾向が強まることは、間違いありません。

(筆者:渡辺敦司)

【お詫びと訂正】

2017年10月24日に掲載しました立教大学の入試内容に一部誤りがありましたので、訂正させていただきました。

2018年度から入試制度に導入する英語外部試験のスコア利用について、「得点の85%ないし95%に換算できる」と記載していましたが、正しくは「換算表に基づき1点単位で換算される」となります。

ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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