日本の中高生は創造性が低い!?

これから社会に出ていこうとする子どもたちには、「第4次産業革命」「Society 5.0」などと呼ばれる、新しい時代が待っています。政府も最新の「成長戦略」(未来投資戦略2017)の中で、イノベーション(技術革新)の必要性を訴えており、新しい価値を創造する力が、ますます求められます。肝心の子どもたちは、自分たちの創造力について、どう捉えているのでしょうか。

将来の仕事として展望できず

PDFファイルで知られるアドビシステムズは5~6月、1995~2008(平成7~20)年に生まれた「Z世代」(ポスト・ミレニアル世代)について、5か国を比較したオンラインアンケート調査を行っています。Z世代は、生まれながらにデジタル環境が身近にあった、生粋のデジタル・ネイティブです。他国では11~17歳(調査は昨年9~10月に実施)ですが、日本では12~18歳を対象にしました。

自分や同世代をどう考えるかを5項目まで選んでもらったところ、「創造的」だと回答したのは、米国で47%(2位)、オーストラリアで46%(1位)、ドイツで44%(2位)、これらに比べて低めの英国でも37%(5位)だったのに対して、日本は8%にすぎませんでした。「はずかしがり」(1位)や「少しなまけ者」(2位)といった控えめな見方や、「協調性がある」(3位)といった項目が優先されたにしても、低い自己評価と言わなければなりません。上の世代に比べて「創造的ではない」と回答した割合を見ても、他の4か国が11~19%にとどまっているのに対して、日本では36%に上ります。

これには、自己肯定感の低さだけでなく、将来の展望も左右しているようです。「将来何かを作る仕事をしていると思う」と回答したのは、他の各国が70~83%に上ったのに対して、日本は43%。「創造性が求められる仕事や職業はたくさんある」になると、各国の73~77%に対して、日本は31%だけでした。同社では、日本のZ世代は、創造性が求められる仕事は一握りで、創造的であることは特別な限られた人の事であると考えている可能性が高いと見ています。

アクティブ・ラーニングにも期待薄

文部科学省も、変化の激しい社会に対応できる子どもたちを育てていこうと、学習指導要領の改訂を決めました(小学校は2020<平成32>年度から、中学校は21<同33>年度から、高校は22<同34>年度入学生から全面実施)。そこでは、複雑で予測困難な社会がどのようになっても対応でき、人間ならではの感性を働かせて、むしろ新しい社会を創っていけるような資質・能力の育成を掲げています。目玉としてアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)を打ち出しているのも、そのためです。

しかし授業について、アクティブ・ラーニングや実習・演習が効果的であると考えている日本のZ世代は35%で、ドイツ(43%)を下回り、米・英・豪(65~78%)よりずっと少なくなっています。今後グローバル化もますます進むなか、これらの国の若者と競争したり協働したりしなければならない時代になることを考えれば、心配な数値です。

次期指導要領という「器」はできました。あとはその中に「魂」を入れて、日々の授業で創造の楽しさを実感させ、未来に向けた資質・能力を育んでいく必要があるでしょう。指導要領の移行措置は、来年度から始まります。これからの授業革新に、大いに期待したいものです。

※「教室でのZ世代:未来を作る」調査結果
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201706/20170629-japan-gen-z.html

※次期学習指導要領の考え方(中教審答申)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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