大学の一般入試はどうなる? 「高大接続改革」で

大学入試が、現在の中学3年生が受験する2021(平成33)年度入学者選抜から、大きく変わります。それも、大学入試センター試験の後継となる「大学入学共通テスト」が始まったり、AO入試や推薦入試がそれぞれ「総合型選抜」「学校推薦型選抜」に衣替えしたりするだけではありません。「一般入試」が「一般選抜」になるのです……。「何だ、大して変わらないじゃないか」と思わないでください。そこには、深い意味が込められています。

主体性・多様性・協働性までも問われる

一般選抜では、これまでの筆記試験や、高校が提出する調査書だけでなく、志願者本人が高校時代の学習履歴や入学後の計画を記した資料の他、エッセー、面接、ディベート、集団討論、プレゼンテーション(口頭発表)、各種大会や顕彰などの記録、総合的な学習の時間などで探究した学習の成果などを、積極的に活用するよう促しています。

多少は提出書類が増えたとしても、今までとそう違わないだろう……と高をくくってはいけません。これまでは調査書をほとんど活用せず、実質的にペーパーテストの点数だけで合否を決めていた大学がほとんどだったことも事実です。しかし今回は、ペーパーテストでは測れない「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(主体性・多様性・協働性)を評価するために、これらの多様な選抜尺度を課すことが求められています。

また、教科・科目のテストを課す場合でも、共通テストと同様、知識・技能だけでなく論理的な思考力・判断力・表現力等を問うとともに、記述式問題の導入・充実にも取り組むとしています。たとえば国語なら、共通テストの記述式は80~120字程度の問題が3題程度ですが、大学入試センターが各大学の個別選抜用に提供する問題では、200~300字程度を書かせる問題を想定しています。かなりの書く力が求められそうです。

志望校選びの姿勢も改める必要?

これまで受験生としては、どうしても自分の得意教科・科目などから、志望大学や入試区分を選ぶことも普通でした。しかし今後は、そういう発想は通用しないかもしれません。

大学がなぜ、入学者選抜でその教科・科目を課すかというと、その教科・科目で身に付ける学力が、入学後にも必要になるからです。とはいえ今までは、できるだけ受験生の中でより高い学力を持つ者を選び出す手段として活用されていました。

しかし「高大接続改革」で、各大学には、社会に送り出すべき卒業生像から逆算して、カリキュラムを計画し、そうした大学教育に耐え得る入学者を選抜する方針を明確にすることが義務付けられています(「三つの方針」改革)。その大学で育てたい学生に求める学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)をアドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針、AP)として定め、それを具体化する入学者選抜の方法を考えなければなりません。

既に、調査書を含めた多様な評価尺度をどのように、どのぐらいの割合で評価すれば、ふさわしい入学者が選抜できるか、研究を進めている大学も少なくありません。受験生としても、その大学が課すテストはもとより、提出を求める書類などは、すべて入学後に必要な幅広い学力を問うものだ……と捉える必要があります。

これからは、志望大学にふさわしい入学生になれるよう、高校生活もがんばるといった逆転の発想が求められるでしょう。

※2021年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/07/__icsFiles/afieldfile/2017/07/18/1388089_002_1.pdf

※「三つの方針」策定・運用のガイドライン
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/01/1369248_01_1.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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