部活動の見直し、なかなか進まず?

中学校や高校の部活動をめぐっては、土日や夏休み中なども休みなく活動を続けることによって、子どもの生活にも影響を与えるだけでなく、教員にとっても多忙化に拍車を掛ける大きな要因になっています。文部科学省は再三、見直しを求めているのですが、その効果はあったのでしょうか。

小・中学校を設置する市区町村で遅れ

文科省は、「教員の働き方改革」を検討するよう諮問した中央教育審議会の総会に合わせて、学校の業務改善に関する教育委員会の取り組み状況(3月末現在)の速報値をまとめました。この中で、運動部活動指導についても状況を尋ねています。

運動部活動の指導に関して「改善策を講じている」と回答したのは、47都道府県すべてと、20政令市の90.0%、1,718市区町村の64.3%でした。いまだ3分の1の市区町村では、見直しに着手できていないことになります。

具体的な改善内容を聞いても(数値は全自治体に占める割合)、「休養日等の基準を設定」が都道府県で87.2%、政令市で70.0%、市区町村で42.9%。やはり小・中学校などを設置する市区町村での取り組みが遅れています。しかも、こうした数字は教委としての取り組みですから、管下の学校が足並みをそろえて休養日を設けたかどうか、おぼつかないところです。

今年度から、教員以外のスタッフが単独で部活動の指導や対外試合の引率ができる「部活動指導員」が制度化されましたが、「外部指導者の活用の拡大のための特別な措置」を設けているのは、各76.6%、80.0%、28.5%と、都道府県・政令市と市区町村の落差が目立っています。部活動指導員を配置するにも財政的な裏付けが必要ですから、どうしても市区町村レベルではすぐに措置することが難しいところもあるようです。

これが「顧問の複数配置の促進」になると、都道府県でも55.3%と低くなり、政令市も35.0%、市区町村は30.6%となっています。小規模校化によって、一校当たりの先生の数も少なくなりますから、複数の顧問を置くどころか、顧問一人さえ充てられずに部活動自体を縮小せざるを得ない学校も珍しくありません。

休養日設定も「自主的・自発的」に

学校の業務改善をめぐって文部科学省は、2015(平成27)年7月にガイドラインを策定し、16(同28)年6月には一層の取り組みを行うよう、都道府県教委などに通知しています。その結果が、先に見たような状況です。これを受けて文科省は、引き続き積極的な取り組みを行うよう、改めて通知しました。運動部活動については、引き続き適切な練習時間や休養日を設定するよう求めるとともに、大会などを主催する都道府県の連盟などとも協議を進めるよう求めています。

部活動は、学校の教育活動の一環として行われていますが、あくまで「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」(中学校学習指導要領)ものです。自治体や学校が一律の基準を設けることも大切ですが、各部においても、自主的・自発的に活動の見直しに取り組むことこそが、教育活動としても求められます。試合に勝ちたいがために過熱しがちな活動を抑えるには、保護者の役割も重要でしょう。

※2016年度教育委員会における学校の業務改善のための取組状況調査結果
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1387071.htm

※運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第1回)配付資料
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/1386194.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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