夏、飛び立てグローバル人材!

もうすぐ夏休み。短期の語学研修や、9月入学に合わせた海外留学の準備に追われているお子さんもいることでしょう。近年では国内でも海外の人たちと交流する機会が増えてきていますが、やはり現地で異文化を丸ごと体感することは、何にも代えがたい経験となることは間違いありません。グローバル人材の育成が国を挙げての課題となっているなか、実態はどうなっているのでしょうか。

3か月未満は大幅減

文部科学省は、隔年で「高等学校等における国際交流等の状況」を調べており、最新の結果は2年前(2015<平成27>年度)になります。それによると、生徒を3か月以上の「留学」に派遣した高校は、全高校(当時は4,939校)の22.3%に当たる1,100校で、2013(平成25)年度の前回調査と比べると20校減少しました。ただし、派遣された生徒の延べ数は7.7%(300人)増の4,197人となっています。行き先は42か国・地域(前回調査比4か国・地域減)で、米国が29.7%(1,245人)を占めています。

一方、3か月未満の「研修旅行」に生徒を派遣した高校は、36.2%に当たる1,788校で、171校の減少となりました。派遣された生徒の延べ数を見ても、17.1%(6,507人)減の3万1,645人となっています。海外に出ていきたがらない「内向き志向」も指摘されますが、景気回復の実感がなかなか家庭にまで届かないなか、わざわざ海外に出なくてもよいと考える生徒が少なくないのかもしれません。

生徒にアンケート調査をしたところ、将来「留学したい」と回答した生徒は前回調査(43.7%)に比べ4.0ポイント減の39.7%で、40%をわずかながら下回ってしまいました。留学したらやりたいこと(複数回答)を尋ねると、「語学力を向上させたい」を挙げたのは、前回の61.5%から54.2%へと、7.3ポイント低下しています。同様に、「外国の人と友達になりたい」は53.1%→36.7%、「外国の文化、スポーツ、歴史、自然等に触れたい」も47.8%→39.1%に低下しました。一方で、「新しいことに挑戦したい」と回答したのは27.7%→28.4%と若干増えていますから、異文化体験に意欲を持つ生徒は一定いるようです。

高校の18%が海外修学旅行

最近では、修学旅行先を海外に設定することも珍しくなくなっています。外国への修学旅行を実施した高校は、896校でした。前回調査に比べ3校減っていますが、統廃合などにより高校数自体が減っていますから、実施率は18.0%から18.1%へと微増しています。参加した延べ生徒数は、2.2%(3,739人)減の16万4,929人でした。行き先は32か国・地域(前回調査比1か国・地域増)で、校数では米国(281校)が最も多いのですが、台湾には前回より92校多い232校の3万5,775人が訪れており、米国(3万8,453人)に迫る勢いです。行き先には直近の治安状況などが反映するため、一概には言えませんが、前回はシンガポールが2位に挙がっており、アジアに注目する傾向は、経費負担の面でも、これからアジア諸国との経済的な結び付きがますます密接になることから考えても、理由のあることでしょう。

文部科学省も「トビタテ!留学JAPAN」などの留学支援策を進めています。しり込みする若者の背中を押すためにも、経済的な面を含めた支援の充実を期待したいものです。

※高校生の留学生交流・国際交流等に関する調査研究等
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/koukousei/1323946.htm

※トビタテ!留学JAPAN
http://www.tobitate.mext.go.jp/index.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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