夏の部活、やり過ぎに注意!?

夏休みが近づいてきました。といっても、お盆を除けば部活動の予定がびっしり……というお子さんも少なくないことでしょう。
一方で、運動部活動をめぐっては、やり過ぎが子どもの健康に悪影響を及ぼすばかりか、教員の長時間労働を助長していることが問題になっています。文部科学省・スポーツ庁は再三、部活動に休養日を設けるなど適切な運営を図るよう通知を出している他、5月にはガイドラインを作成すべく、有識者20人による検討会議を発足させ、運営の適正化に乗り出しています。

中学校の約4割が土日に休養日を設けず

スポーツ庁が昨年、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)の中で行った運動部活動に関する調査では、中学2年生の男子で約8割、女子で約6割が、運動部活動に所属していました。1週間の活動時間は、平日で2時間程度ですが、休日でも3時間前後となっています。部活動の休養日は「週1日」が54.2%、「週2日」が14.1%、「週3日以上」が2.9%などでしたが、「設けていない」も22.4%を占めていました。

もっと深刻なのが、土日の活動です。1か月間、土日に休養日を設けていない中学校が42.6%に上り、休養日を「月に1〜3回設けている」学校を合わせると、72%の中学校が、少なくとも月に1回以上は、土日の両方で部活動を実施していることになります。

こうした実態を受けて、スポーツ庁は検討会議で、改めて高校を含めた実態調査を行ったり、スポーツ医・科学的観点からの調査研究も委託したりながら、練習時間や休養日の設定、指導の充実、今年度から制度化された「部活動指導員」の活用などに関するガイドラインを来年3月までに作成し、公表することにしています。

運営の在り方、見直す時期に

部活動をめぐって文部科学省は、1998(平成10)年1月の通知(当時は文部省)以来、適切な練習時間や休養日を設定するよう求めてきましたが、先に見たとおり、なかなか浸透しません。理由としては、対外試合が多かったり、勝利至上主義で顧問の指導にもつい熱が入ったりするだけでなく、生徒自身も「もっとうまくなりたい」という熱意から厳しい練習を求める傾向があることも否定できないでしょう。しかし、先の調査にもあるとおり、適切な休養日等が設定されていれば運動部活動に入ったのに……という生徒も少なくありません。

一方で中学校や高校では、多忙化や小規模校化、大量退職に伴う教員の入れ替わりなどの要因が重なって、必ずしも十分な研修を積んだ教員が運動部活動の顧問をしているとは限りません。3月に栃木県の高校山岳部の登山講習会で雪崩により生徒・教員8人が死亡した事故に象徴されるとおり、正しい知識や理解に基づいた指導が急務です。

もちろん、活動のし過ぎの問題は体育系に限らず、吹奏楽部など文化系にも共通することです。勉強や家族との団らん、地域での活動などとのバランスも取れた、望ましい部活動の在り方を真剣に考える必要がありそうです。

※運動部活動の適切な運営をめぐる文科省・スポーツ庁の通知(2017年1月6日)
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/1381312.htm

※運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議(第1回)配付資料
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/1386194.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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