なぜ先生はますます忙しくなったのか

小学校で3割、中学校で6割の先生が過労死ライン……。こんな衝撃的なニュースがあったのを覚えているかたも多いことでしょう。文部科学省が10年ぶりに行った、小・中学校の「教員勤務実態調査」の結果です。ただ表面的な数値以上に、事は深刻なようです。

実は10年前も大変だった!?

まず注意したいのは、2016(平成28)年10~11月という調査時期です。学校の繁忙期といえば、新年度の始まる4月や、成績処理が必要な7月・12月・3月が代表的です。通常期の10~11月ですら超過勤務が常態化しているのですから、年間を通じて、かなり過酷な勤務実態だと言わなければなりません。

さて、一般の先生(教諭・主幹教諭・指導教諭)の校内での勤務時間を前回調査と比べると、小学校は43分増の11時間15分、中学校は32分増の11時間32分となっています。小学校は授業(27分増)や学年・学級経営(10分増)など幅広い業務で、中学校では授業(15分増)や授業準備(15分増)、成績処理(13分増)といった授業関連が中心に増えています。その要因として、2008(平成20)年1月告示の現行学習指導要領で、授業時数が増えたことが大きいと捉える向きが強いようです。

ここで注意したいのは、前回の2008(平成20)年も、先生たちはかなり忙しかったということです。2002(平成14)年度から小・中学校が同時に全面実施となった旧指導要領では、確かに授業時数を縮減したり学習内容を厳選したりしましたが、直前の「ゆとり教育批判」を受けて、どの学校でも学力向上に力を入れるようになっており、実際の授業も、指導要領に定められた標準時数を上回って実施するのが当たり前になっています。

その上に、現行の指導要領では、全教科に「言語活動」が導入されるなど、授業の質も高めることが求められました。授業関連の勤務時間が、増えないわけはありません。しかも、それだけ心理的な余裕もなくならざるを得ないのが実態です。

中学校は一人の負担が増える

とりわけ中学校が大変なことも、数値の奥から浮かび上がってきます。
中学校教員の週当たり授業担当コマ数は、21~25コマが49.9%、26コマ以上も含めると70.7%です。30年ほど前でさえ20コマを超えると「きつい」と言われたものですが、もうそんな泣き言さえ許されない状況が当たり前になっています。

部活動指導も、確かに激務の要因です。土日の業務時間が2時間10分と、10年前に比べ倍増しています。先生の84.4%が顧問をし、週の活動日は「6日」が49.1%、「7日」も15.1%と、3人に2人が満足な休みをとれていません。

これも、中学校1校当たりの教員数がそれほど増えず(2006<平成18>年比1.6人増の24.2人)、一人にかかる業務が集中していることが背景にあります。文科省は、単独で指導や対外試合の引率ができる「部活動指導員」を制度化しましたが、教員の負担「軽減」になるとはいえ、根本的な解決策になるわけではありません。

「働き方改革」に取り組む政府も、教員に関して、まずは教育再生実行会議で検討したうえで、中央教育審議会に諮りたい考えです。ただ、学校現場での業務見直しには限界もあります。国と地方が早急に有効な手立てを打ちだすことが求められます。

※教員勤務実態調査の集計(速報値)について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/04/1385174.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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