子どもの「生活満足度」、実は将来にも大きな影響!?

経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の15歳の生活満足度は47か国中41位……。
以前、こんなニュースが流れていたのを覚えているかたもいることでしょう。ただ、ここで言う「生活満足度」というのは、単に今が幸せかどうかアンケートしたという単純なものではありません。
どうやら将来の社会生活にも、そして学校での学びにも大きく影響する、けっこう重要な話のようなのです。

充実した人生のための「well-being」(健やかさ・幸福度)

調査は、OECDが3年に1度実施するPISA(生徒の学習到達度調査)の一環として行われる「質問紙調査」で尋ねたものです。たまに行う国際調査だから、ちょっと子どもに関係する質問でも加えてみようか……などという軽い気持ちで聞いたものでは決してありません。PISA自体が、学校で学んだことを競う国際学力コンテストのようなものではないのと同様、この質問も、15歳(日本では高校1年生=中学校卒業生に相当)が将来、社会に出た時に、学んだことを実生活でどれだけ活用できるかを探ろうというものです。

一部記事では生活満足度と訳されているのは、英文でwell-being。「満足な生活状態」(ベネッセEゲイト英和辞典)などと訳されることもありますが、日本版の報告書をまとめた国立教育政策研究所では「健やかさ・幸福度」という仮訳を充てています。

報告書によると、OECDの定義は「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的、認知的、社会的、身体的な働きと潜在能力」なのだそうです。何だか難しそうですが、「人生」の「潜在能力」とあるのが注目点です。

「学びに向かう力・人間性等」の中で

秋田喜代美・東京大学大学院教授が2015(平成27)年3月、ベネッセ教育総合研究所とOECDの共同シンポジウムで説明したところによると、well-beingは、OECDが2030(平成42)年に向けた教育の在り方を世界に提案する「Education 2030 学びのためのコンピテンシー(資質・能力)」プロジェクトの中で検討している「社会情動的スキル」の中で重視している概念です。

Education 2030をめぐっては、日本(文部科学省)とOECDが2015(平成27)年3月から行っている政策対話の成果を、その中に生かすとしています。そして実は、日本側が成果を国内で生かしているのが、次期学習指導要領なのです。そのもとになった中央教育審議会の答申(2016<平成28>年12月)でも、20(同32)年度から小学校で全面実施となる指導要領が10年間用いられることを想定して「2030年の社会」を見通すとしているのには、そんな意味合いもあります。

次期指導要領は、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……という「資質・能力の三つの柱」を立て、教科などすべての教育活動を、これに基づいて行うとしています。well-beingを含む社会情動的スキルは、このうち(3)に該当するものです。

子どもたち自らが将来、健やかに、幸せに生きていく力を、意識して学校時代に培うことが求められている……well-beingは、そんな重要性を表わすキーワードなのです。子どもの今の生活を幸せにすることはもとより、将来までも展望して、しっかりとした資質・能力を身に付けさせたいものです。

※「生徒のwell-being(生徒の『健やかさ・幸福度』)」について
http://www.nier.go.jp/03_laboratory/pdf/press_20170419.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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