大学入試の新方針、6月中にも策定 問われる勉強の姿勢

今年の中学3年生からが受験対象となる、新しい「大学入学共通テスト(仮称)」の実施方針案や、個別大学に関する入学者選抜実施要項の見直し予告案などが公表されました。現在、パブリックコメント(意見公募手続)が行われており(6月14日まで)。6月中にも正式決定される見通しです。これからの児童生徒には、勉強姿勢を大きく変えることが求められそうです。

新テスト、出題傾向も変わる

新テストは、実施時期や出題科目こそ現行の大学入試センター試験と変わりませんが、国語と数学に記述式問題も導入されること、英語は英検やGTEC、TOEFLなど民間の資格・検定試験に替えることが、大きな特色です。16日に発表された「高大接続改革の進捗状況について」によると、▽国語の記述式は80~120字程度の問題を含め3題程度▽数学の記述式は数式や問題解決の方略などを問う問題を3題程度▽英語の資格・検定試験は4~12月の年2回まで受験した結果を6段階で大学に提供する……などとしています(英語のマークシート式問題を当面残すかどうかは両論併記)。

新テストというと、こうした試験方式の変更に目を奪われがちですが、忘れてはならないことがあります。全体の出題傾向自体が変わることです。これまでのセンター試験が「知識・技能」を中心に測っていたとするなら、新テストでは、マークシート式も含め、思考力・判断力・表現力を一層重視した作問を工夫するといいます。

そして、もっと忘れてはならないのが、各大学の入学者選抜改革です。高校で知識・技能をしっかり身に付けたうえで、新テストで思考力・判断力・表現力を問うわけですから、入学者選抜で同じような能力を問うペーパーテストをしても、それほど意味はありません。そこで、多様な選抜方法を導入することで「主体性・多様性・協働性」までをしっかり評価し、これら「学力の3要素」すべてを総合して合格者を決めてもらおう……というのが今回の入試改革の狙いです。

人工知能にはできない資質・能力を

実は従来のセンター試験も、知識・技能だけでなく思考力なども必要とされる出題を目指しており、高校現場などからも「良問だ」と評価されてきました。しかし知識の丸暗記だけでも、ある程度の点数が取れたことは事実です。言ってみれば、受ける側の意識の問題だったといえます。

それを象徴するのが、国立情報学研究所が開発していた人工知能(AI)の「東ロボくん」です。昨年の模試で国公立23大学を含む535大学で合格可能性80%の成績を出せたのですが、記述問題が中心の東大入試にチャレンジするのは断念しました。AIはキーワードだけで類推して問題を解くため、ある程度の点数が取れても、人間のように文章の意味を理解して答えることはできないことがわかったからです。

逆に言えば、知識の丸暗記ならAIにかなうはずはなく、そうした勉強ばかり続けていれば、いずれ技術革新によって、AIに将来の仕事さえ奪われかねません。文章の意味を正しく捉え、他の人たちとも話し合いながら自分の頭で考え、実行していくことは、人間にしかできません。次期学習指導要領でも、そうした資質・能力の育成を目指しています。

改革を主導してきた安西祐一郎・日本学術振興会理事長は、記述式問題では学力の3要素すべてが求められると説明しています。普段の授業から多様な勉強を行い、幅広い学力を身に付けなければ、入試はもちろん、大学や社会でも通用しない時代が来るのです。そうした改革の狙いを押さえながら、どんな方針が示されるかに注目したいものです。

※高大接続改革の進捗状況について(2017年5月16日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/05/1385793.htm

※高大接続改革の進捗状況に関する意見募集の実施について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000899&Mode=0

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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