「非認知能力」ってナニ? 実は次期指導要領でも重視
最近、教育論議の中で「非認知(的)能力」「非認知(的)スキル」といった言葉が、よく使われています。いったい、どういうものなのでしょうか。
どうやら次期学習指導要領等(全面実施は幼稚園が2018<平成30>年度から、小学校は20<同32>年度からなど)とも大きく関わる、22世紀まで生きる子どもたちにとって、ますます注目されるチカラのようですが……。
人生の成功に必要なIQ以外のチカラ
保護者の方々も、子どものころに知能検査を受けたというかたは少なくないでしょう。「知能指数」(IQ)という専門用語も、すっかりおなじみです。国立教育政策研究所は、非認知能力についてまとめた報告書の中で、「『IQ神話』への疑い」と表現して、「知能」以外のチカラが注目された経緯をまとめています。
以前、「EQ」(こころの知能指数)という用語がブームになったことがあります。「感情的知性」(EI)の指数ということで、知性(認知能力)を働かせる別のチカラがあり、それが人生の成功には不可欠だということを示した一端だと言えます。しかし、それが何なのか、具体的に必ずしも明らかではなく、ましてや日本では、注目度は高いのに、十分な解明がなされてきませんでした。
報告書では検討の結果、非認知能力を「社会情緒的コンピテンス」と言い換えています。「社会情緒的スキル」と呼ばれることもありますが、すべての子どもに備えさせることを想定した「スキル」や「アビリティー」よりも、それぞれの子どもの特性に応じて働かせるものであることを想定した「コンピテンス」がよいとしています。細かい用語はさておき、「できるか否か」「より多く、よりたくさん持つか否か」というものではない性質に変わりはありません。
「生きる力」の構成要素としても
報告書によると、実は、この社会情緒的コンピテンスが、日本の学校教育が近年、育成を目指してきた「生きる力」の構成要素であると指摘しています。代表的な国際学力調査PISAで日本が一貫して好成績を上げているのも、そうした社会情緒的コンピテンスが育成されているからだ……というわけです。
次期指導要領では、「資質・能力(コンピテンシー)の三つの柱」として、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……の育成を目指すことを掲げています。この(3)が、社会情緒的コンピテンスに当たるようです。
非認知能力をめぐっては、PISAを実施する経済協力開発機構(OECD)と、ベネッセ教育総合研究所が「社会情緒的スキル」について共同研究を行ったことがあります。また、同総研は、2012(平成24)年から年少児を毎年追跡する「幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査」を実施しており、(1)生活習慣(2)学びに向かう力(好奇心・自己主張・協調性・自己抑制・がんばる力)(3)文字・数・思考……が相互に関係し合い、あるチカラが次の年に別のチカラを向上させるといったようなプロセスを明らかにしつつあります。
子どもに社会的な成功を期待するなら、早期教育を行ってよりよい学校に進ませればよい……という単純なものではありません。その子なりの社会情緒的コンピテンスを身に付けさせ、自発的に勉強をがんばり、他者や社会と積極的に関わっていけるチカラを幼少時から育むことこそが、重要なようです。
※「国立教育政策研究所「非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する調査報告書」
http://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/syocyu-2-1_a.pdf
※幼児期から小学1年生の家庭教育調査・縦断調査
http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3684
(筆者:渡辺敦司)