厳しい雇用環境、学校で必要な備えは?

大手企業で新入社員が過労により自殺するなど、厳しい雇用環境が問題となっています。もはや単純に「よい大学から、よい企業へ」と言っていられる時代ではないことは、保護者の方々が実感していることではないでしょうか。
これからグローバル化や技術革新のますます進む社会に出ていこうとする子どもたちは、なおさらです。現状はどうなっていて、学校時代にどのような学びが求められるのでしょう。

働くためのルール学習も不可欠

厚生労働省が所管する独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は昨年2~3月、正社員として勤務した経験が1回でもある、21歳から33歳までの若者に調査を行いました。

経験した職場トラブルについて、初めて正社員として勤務した先に勤続している者と、離職した者とを比べたところ、「残業代が支払われなかったことがあった」が男性の場合、勤続者で25.2%、離職者で38.1%、女性が同25.2%・35.1%、「暴言、暴力、いじめ・嫌がらせを受けた」が男性各11.0%・22.2%、女性各13.9%・22.7%など、両者に差のある項目は少なくありません。

就職してから3か月間に受けた研修(教育訓練)について聞くと、「先輩社員と同等の業務を、はじめからまかせられた」が男性で勤続者20.1%、離職者23.8%、女性で各22.3%・28.0%、「指示が曖昧(あいまい)なまま放置され、何をしたらよいのか分からない時期があった」が男性で各30.2%・39.3%、女性で各30.8%・36.1%となっており、学歴で大きな違いはありませんでした。やはり教育訓練が十分に行われないまま「即戦力」となることが求められると、離職を促してしまう可能性が高まるようです。

JITPTでは、若者に▽働くためのルール学習や、トラブル相談窓口の活用方法の教示▽転職も視野に入れたキャリア形成……について広く指導することを提言しています。

「キャリア教育」初めて指導要領に

これまでも高校や大学などの各段階で、進路指導やキャリア教育は行われてきました。ただ、それが進学・就職のための「出口指導」にとどまり、進学・就職後にどのような現実が待っていて、それに対応するためには、どんな知識やスキルが必要かについては、指導が弱かった面があったことも確かです。

昨年12月の中央教育審議会答申は、▽職場体験活動のみをもってキャリア教育を行ったものとしているのではないか▽社会への接続を考慮せず、次の学校段階への進学のみを見据えた指導を行っているのではないか▽職業を通じて未来の社会を創り上げていくという視点に乏しく、特定の既存組織のこれまでの在り方を前提に指導が行われているのではないか▽将来の夢を描くことばかりに力点が置かれ、「働くこと」の現実や必要な資質・能力の育成につなげていく指導が軽視されていたりするのではないか……と指摘。これを受けた学習指導要領では、小学校の段階から「特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」が盛り込まれました。「キャリア教育」の文言が小中学校の指導要領に入るのは、初めてです。

学校教育は、広く言えば、社会に出るための準備です。「社会に開かれた教育課程」が今回の指導要領改訂のキャッチフレーズであり、その社会の現実を一番よく知っている保護者の出番ではないでしょうか。

※若年者の能力開発と職場への定着に関する調査
http://www.jil.go.jp/institute/research/2017/164.html

※中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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