次期指導要領、教科も「活用」型に

小学校は2020(平成32)年度から、中学校は21(同33)年度から全面実施となる次期の学習指導要領は、パブリックコメント(意見公募手続)を経て、3月中に告示される見通しです(高校は1年遅れで来年3月の予定)。
「社会に開かれた教育課程」をキャッチフレーズに、教科等を超えて、三つの柱による「資質・能力」を育成する……というものですが、保護者をはじめとした一般の人たちにも読んでわかりやすい指導要領を目指した割には、まだまだ専門的な知識がないと、よくわからないのが現状でしょう。どう理解すればよいのか、具体的な例を挙げながら考えてみましょう。

国語で「情報」、算数・数学で「データ」…

文部科学省が作成した「改訂のポイント」の資料を読むと、たとえば国語には、情報の扱い方に関する事項を新設し、(1)共通、相違、原因と結果、意見と根拠、具体と抽象など情報と情報の関係性(2)比較や分類、関係付けなどの情報の整理の仕方、図などによる語句と語句との関係の表し方(3)引用の仕方や出典の示し方、情報の信頼性の確かめ方……などを盛り込むことにしています。

一方、算数・数学では、小学校で「データの活用」という領域を新たに設けて、中学1年生で扱っていた平均値・最頻値・中央値を6年生に降ろしたり、中学校では、データのばらつき傾向をわかりやすく示す「箱ひげ図」を2年生に追加したりするなど、統計の学習を充実させるといいます。

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題に関心を持っているかたなら、ピンとくるかもしれません。これらは、教科で学んだ知識・技能を学校の中だけにとどめず、社会で活用する力にまで引き上げようとするB問題の趣旨を、指導要領上でも更に力を入れようという姿勢を鮮明にしたものと言えます。「活用」の力がこれからの社会で、仕事や市民生活に不可欠な資質・能力になる……との考えからです。
こうした考え方は、全教科・領域等に共通しています。

多様な「見方・考え方」を育成

指導要領案の総則には、どの教科・領域等でも、(1)知識及び技能が習得されるようにすること(2)思考力、判断力、表現力等を育成すること(3)学びに向かう力、人間性等を涵養すること……を偏りなく実現できるようにすることを求めています。これらは「資質・能力の三つの柱」と呼ばれるもので、学校教育法や現行指導要領の「学力の3要素」(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力<3>学習意欲)をパワーアップしたものと言うことができます。

各教科等で求められるのも、教科の中だけにとどまった知識を覚え、ペーパーテストで再現して高い点数を取れるだけの学び方ではありません。学んだ知識を社会と関連付けながら、社会で活用できるような資質・能力にまで高める必要があります。

指導要領案で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせることを掲げているのも、各教科等の中だけの話ではありません。各教科等で働かせた見方・考え方が集まれば、子どもたちは、多様な角度から物事を捉えたり考えたりすることができるようになります。各教科等でも、そのように他教科とのつながりを意識しながら、学校全体として、先の資質・能力を育成しなければなりません。そうしてこそ、学校で学んだことが、社会で活用できる働く資質・能力になるのです。

※小・中学校学習指導要領案
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?OBJCD=100185

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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