東大の推薦、また<定員割れ>も…国立大はさらに拡大へ

今春の大学入試も、国立大学の後期日程が続々と結果発表が行われ、最終盤を迎えています。そんななか、国立大学でも推薦やAOなどで、早々に合否を決めた受験生がいます。推薦・AOなどは今後、大学入試が大きく変わる2021(平成33)年度に向けて、国立大学でも定員を徐々に拡大していくものと見られます。ところで国立大学の推薦・AOなどといえば、2016(平成28)年度に東京大学が推薦入試を、京都大学が特色入試を同時に導入したことが注目を集めました。2年目の状況は、どうなったのでしょうか。

京大は志願者がさらに増える

東大の推薦入試は、学部を決めない一般入試と違って、学部ごとに5~10人程度の募集定員が設定されており、全学で計100人程度となっています。推薦できるのは、各高校から男女1人ずつ。科学オリンピックをはじめとした全国レベルの大会・コンクールや語学の資格・検定試験の高成績者など、学部によって推薦要件が指定されています。そのうえ、大学入試センター試験で「8割以上の得点」を取ることが必須です。

ただ、入学後に学部を選べないことや、推薦要件か高すぎると受け止められたことなどから、初年度の出願者は173人、合格者は77人にとどまりました。2年目の2017(平成29)年度も、出願者は初年度と同数の173人(ただし出願校数は増加)、合格者は71人と、2年連続の<定員割れ>になりました。

一方、京大の特色入試は、学部によって「学力型AO」型、「推薦」型、「後期日程」型があります。2016(平成28)年度は全学の募集定員計108人に対して、616人が志願(うち法学部324人)。合格者は82人でした。2017(平成29)年度は定員145人に対して861人が志願し、こちらは東大と対照的に、好調のようです。後期日程に合わせた法学部(定員20人)を除いても既に97人が合格しています。

2021年度に向けて徐々に変化

ただ、だからといって東大の推薦が<失敗>だと受け止めるのは早計です。東大は2015(平成27)年10月、五神真(ごのかみ・まこと)総長の就任に当たって策定した「東京大学ビジョン2020」で「卓越性」とともに「多様性」を基本理念として掲げ、第3期中期目標・計画(2016~21<平成28〜33>年度)でも「地方出身の学生、女子学生、優秀な人材の入学」を促進するとしています。推薦入試は、そのための重要な方法なのです。

一方、国立大学協会(国大協)も、2015(平成27)年9月に策定した「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」の中で、第3期中期目標・計画の期間中に、推薦・AOなどの入学定員を30%に拡大することを申し合わせています。

欧米などの有名大学では、1校から100人規模で入学するようなことは、まずないといいます。入試制度の違いにもよりますが、高度な研究・教育成果を上げるには、学内の多様性が必要だと考えているからです。今後、国内でも、世界と肩を並べて競争しようとする国立大学ほど、推薦・AOなどの拡大に積極的になることでしょう。

2021(平成33)年度といえば、大学入試センター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を受験した人が、初めて入学者選抜を受ける年です。そうした「大改革」に向かって、大学入試も徐々に変わっていくことでしょう。今のままの入試制度が基本的に続くと考えていてはいけません。

※東京大学 推薦入試
http://cdn.pr.u-tokyo.ac.jp/content/e01_26_j.html

※京都大学 特色入試
http://www.nyusi.gakusei.kyoto-u.ac.jp/tokushoku/

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A